時の狭間1


青森、函館での仕事を終えて、昨夜遅く札幌に戻った。留守中、id:Kakaさんはじめ、遠い谺のような心の奥に響き躰の芯にしみるメッセージを色んな仕方で届けてくださった方々に感謝します。ありがとう。仕事の前後に時間を作って、青森と函館を見て歩いた。特に、初めての青森は懐かしくも新鮮だった。無理をしてローカル線に乗って十和田に足を延ばしたり、レンタカーして下北半島も巡った。祖父の故郷、五所川原六ヶ所村WASAOのいる鰺ヶ沢までは行けなかったのが、ちょっと残念だったが、それでも、この本州北端の土地に住む愉快な人たちに出会うべくして出会うことができて嬉しかった。祖父や祖母の東北なまりを聞き覚えて育った私にとって、青森は記憶の彼方の故郷でもあったから。十和田市現代美術館では巨大なおばさん像に出会い、寂れたアーケード商店街では平べったい桃(ばんとモモ)に出会ってびっくりして思わず買ったり、地下のワイン蔵に案内してもらったり、コーヒーをごちそうになったりして、創業以来97年間、大きくしないことを心がけてきたという桜田酒店の店主やそのご家族のあったかいもてなしを受け心と言葉の根っこに触れるような至福の時間を過ごした。本州最北端の地、大間でも、マグロの手拭やもう作り手がいなくなったという土鈴を買った川畑商店のご夫婦によくしてもらった。道端でイカを干して売るおじいさん、濱端さんから立派なスルメを少し分けてもらった。仕事の拠点だった青森市内でも、駅前の繁華街から少し外れたところにある市場や路地で、ここは日本か、と思わず唸るような根深い空間を歩くことができた。掘建て小屋の屋台でおでんやホルモン焼きの仕込みをしていたおばちゃんの割烹着姿には亡き祖母の面影をみた。もう90歳は越えているだろうおばあさんが歩道で野菜を売る姿が目の奥に焼き付けられた。小島一郎の写真が見られるかもしれないと思って駆けつけた青森県立美術館では、その微かな願いは叶えられなかったが、思いがけず、縄文時代のモニュメントのような美術館の建築設計そのものに感銘を受け、巨大な可愛い「あおもり犬」にも出会えて、ワクワクする時間を過ごすことができた。