工事現場




車に激突され大破した郵便ポストの土台入れ替え工事が行われていた。違う色の作業着に身を包んだ全く違うタイプの三人の年配の人がチームを組んで作業していた。工事現場に横付けされたトラックの荷台には掘り出された古い土台が積まれていた。郵便ポストをボルトで固定する上部の板が少し歪んでいた。ちょうど信号待ちがてら、新しい土台を設置して周囲をアスファルトで固める作業の細部を眺めていたら、郵便ポストはどちらを向いていたかご存知ですか、とブルーの作業着の人に聞かれたのをきっかけに、仕事の邪魔にならないように、使っている道具について尋ねたりした。作業は、大柄な白っぽい作業着の人が木製の鏝(こて)でアスファルト混合剤を大雑把に均しているところだった。鳶職人といった雰囲気の紺色の作業着の人が上下の振動によってアスファルトを固める機械の準備に取りかかった。「これは何ていう機械ですか?」「んーん、よく知らんが、俺らはプレートって呼んでるな」「プレートですか?」「ああ」 ブルーの作業着の人はガスバーナーを使って焼き鏝(やきごて)の準備を始めた。力の要る作業はすべて白っぽい作業着の人が引き受けていた。プレートによってアスファルトはあっという間に綺麗に均し固められた。次に焼き鏝で表面が焼かれた。そして最後に紺色の作業着の人がバケツの水をかけた。シュワーっという音とともに白い湯気が立ちのぼり、辺りはあの(どの?)独特の懐かしい匂いに包まれた。作業は終わった。まるで手際の良い料理を見ているようないい気分だった。郵便ポストの設置は彼らの仕事ではないようだった。私の質問にはブルーの作業着の人が親切に答えてくれた。こう言っちゃ失礼に当るかもしれないが、その人は工事現場には似つかわしくない非常に柔らかい物腰の人だった。言葉遣いや目つきや雰囲気は詩人のようにさえ感じられた。顔は素顔のチャップリンに似ていた。