かつてチェット・ベイカーが限りなく軽快に演奏し、限りなく虚ろに歌ったレッツ・ゲット・ロスト(Let's get lost)のニュアンスに近いレッツ・ゲット・アストレイ(Let's get astray)。アストレイ(astray)はストレイ(stray)の派生語。ストレイと言えば、野良犬や野良猫。語源はラテン語で「外にさまよい出る」の意。
朝日新聞2009年11月24日
id:tanikさんが、私の動向を一言で「漂流」と言い当ててくださった。驚くと同時に嬉しかった。「漂流」については、少し説明が要るかもしれない。「漂流」とは、あくまで相対的な概念。私が漂流しているように見えるとすれば、それは世界の方が無闇に漂流しているにもかかわらず、そうとは見なされないことが多いからに過ぎない。実は私は一ヵ所に留まるためにこそ、漂流しつづけなければならない気がしている。姜信子に倣うなら、越境の旅を続けなければならない、ナミイおばあに倣うなら、歌い続けなければならない、藤原新也に倣うなら、歩き続けなければならない、辺見庸に倣うなら、はぐれ続けなければならない、柄谷行人=マサオ・ミヨシに倣うなら、境界侵犯し続けなければならない、そして私流に言うなら、書き続けなければならない。止まってしまえば、世界に流され、それこそ、無闇に漂流してしまう。そんな風に感じている。