オルフェウスのように like Orpheus


昨夜久しぶりにフルートを吹いた。ところが、まともに音も出せなくなっていてちょっとショックだった。しかし、ソローさんの次のような言葉にいたく励まされた。




asin:4880593540 本書は最近出た初の日本語全訳です。立派な本です。

 オルフェウスは自分の竪琴(リラ)から出る旋律は聴かず、竪琴に吸い込まれる旋律だけを聴く。というのも、木霊が後に続くのと同じくらい、本来の旋律は音に先行するからである。それ以外は岩、樹木、獣たちからの心づけである。(山口晃訳『コンコード川とメリマック川の一週間』而立書房、2010年、386頁)

原文はこう。

Orpheus does not hear the strains which issue from his lyre, but only those which are breathed into it; for the original strain precedes the sound, by as much as the echo follows after. The rest is the perquisite of the rocks and trees and beasts.(Henry David Thoreau: A Week on the Concord and Merrimack Rivers; Walden; or Life in the Woods; The Meine Woods; Cape Cod, The Library of America, 1985, p.277)


そうだ! 音を出したいと願った瞬間に音になる前の「本来の旋律(the original strain)」は生まれている。たとえそれが実際に音にならなくても、フルートには吸い込まれている。それをちゃんと「聴け」ばいいんだ。そんな「本来の旋律」を聴く耳を持つ人のために吹けばいいんだ。違うか? まあ、その前にちゃんとフルートの手入れをしよう。