今こそ歌うべき時


ストラスブール在住の小島剛一さんから便りがあった。フランスでも連日、日本の地震津波による被害の様子と原発事故の経過が大きく報道されている。そんななか、3月25日に当地で予定されている日本の歌を中心とした合唱コンサートの開催を危ぶむ声が聞かれ、多くの死者を悼むべきこの時期に歌っている場合ではないのではないかと、不安を口にする合唱団員もいたらしいが、小島さんは「今こそ歌うべき時ですよ。差しあたって生きている人を力づけるのが急務です。今『大漁歌いこみ』を歌い上げるのを取りやめるなんて問題外です」と、きっぱり答えたという。同感である。そしてすでに印刷されたプログラムを改めて読み返して、偶然の結果とは思えない、ある意味深長な符合を感じたという。特にプログラムの第一部は「夜明けの歌よ、私の心の昨日の悲しみ、流しておくれ」で始まり、途中に子守唄が二曲入って、宮城県民謡の「大漁歌いこみ」で終わる。小島さんたちはストラスブールから日本に向けて万感の思いを託して歌う。宮城県亘理町にまだ連絡のとれない従兄弟の方たちが住んでいらっしゃるという小島さんの思いはきっと歌にのって届く。

生きていれば「今頃フランスで『松島のサーヨ瑞巌寺ほどの寺も無いトエ』ってフランス人の合唱団員に歌わせてるんだなあ」と思ってくれることでしょう。

プログラム
第1部
夜明けの歌(岩谷時子作詞・いずみたく作曲)
雪の降る町を(内村直也作詞・中田喜直作曲)
ずいずいずっころばし(わらべ歌)
舟唄(阿久悠作詞・浜圭介作曲)
To Nisu Vesla(Dalmatinska narodna pisma)
柴の折り戸(桃太郎伝説の子守唄)
お江戸日本橋(日本古謡)
中国地方の子守歌(山田耕筰
大漁歌い込み(宮城県民謡)


第2部
花嫁人形(蕗谷虹児作詞・杉山長谷夫作曲)
Christum Ducem(Josquin des Prés)
天草の雨は(藤浦洸作詞・古関裕而作曲)
海は目をつぶる(吉岡治作詞・桜井順作曲)
浜辺の歌(林古渓作詞・成田為三作曲)
Le Temps des Cerises(J.-B. Clément, A. Renard)
U Stanbolu na Bosporu(Bosanska narodna pesma)
貝殻節(鳥取県民謡)
Le Roi A Fait Battre Tambour(Chant populaire français)
天城越え吉岡治作詞・弦哲也作曲)


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