記録に託された記憶:小沢昭一(監修)・本橋成一写真集『昭和藝能東西』


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写真家は、ひとつの時代の終わりとともに消えていく「いのち」の記憶を記録にとどめておこうとするのかもしれない。本書は、昭和という時代とともに消えた東西の芸能の記録である。それはいうまでもなく昭和という時代の記録でもある。「あとがき対談」の話題は自然と芸能の終焉に向かう。小沢昭一の割り切り方が興味深い。

本橋 でも小沢さんのすごいところは、こういう伝統芸なんかは、なくなるものはなくなっても仕方ない、と割り切っていらっしゃる点です。
小沢 そう、人々が芸能を捨てたからなくなったんだから。「保存会」なんていって無理に残したり保存しようというのは、変だと思うんだよね。
本橋 だったらまったく新しいものを作ったほうがいいですよね。
小沢 消えていいんですよ。その時代、その時代で消えて当然。でも芸能の本質みたいなものも一緒に消えていっちゃってる。そういう寂しさはありますよね。

 「藝能・思い出語り」(2010年4月22日 東京新橋にて収録)から