アルザスからの通信:名前の遠近法

昨夜、マルグリット・デュラスの「塩漬けキャベツ」について、詰めが甘い、脇も甘い書き方をしたら、ストラスブールに住む小島剛一さんからすかさず関連する原語とアルザス料理に関して大変ありがたい応答が電子メールで届いた。小島さんによれば、マルグリット・デュラスの「塩漬けキャベツ」の原語はたしかにフランス語のchoucrouteであるが、アルザス語ではSürkrüt(= 酸っぱいキャベツ)と言う。


それに続けて、小島さんは地元アルザスのシュークルートに関する食習慣と名前が指示するものの変移、あるいは一種の遠近法に関して次のように具体的に教えてくれた。

「そのままで(= 冷たいままで)」食べることはアルザスでは非常に稀です。普通は、塩漬けの豚の肩肉や肋(あばら)肉、塩漬けの豚足、豚肉の(= 魚肉、兎肉、七面鳥肉などの入っていない)ソーセージなどと一緒に辛口の白葡萄酒またはビールで煮込み、別の鍋で皮付きのまま茹でたじゃが芋を添えて食べます。煮込み料理にはよくあることですが、「煮返したほうが美味しい」と感じる人が多く、一回に二食分の分量を炊いておく習慣の家庭がたくさんあります。

アルザス人が「choucrouteを食べる」と言うとき、頭に浮かぶのは、塩漬けキャベツそのものではありません。Choucrouteは、本来は漬物の名前ですが、何よりもその漬物を使った定番料理の名前なのです。(2011年11月11日)


なるほど。マルグリット・デュラス自身、塩漬けキャベツは「煮返したほうが美味しい」と感じるひとりだったのかもしれない。