小樽運河



Long cours sur les rivières et canaux de Georges Simenon


ジョルジュ・シムノン(Georges Simenon, 1903–1989)が中古の救命艇を「家船」のように改造したジネット号で妻と愛犬と召使いと共にフランス各地を結ぶ運河の旅に出たのは、1928年、25歳の時だった。本書は当時複数の週刊誌に発表された旅の体験記を一冊にまとめたものである。本書には、シムノンからの依頼(1931年)を受けたチェコ出身の写真家ハンス・オプラトカ(Hans Oplatka, 1911–1992)による運河や河岸を背景とした当時の人々の生業や暮らしの魅力的な写真(37葉)が収められている。また、シムノン自身による船旅の様子を活写した写真(4葉)も採録されている。


プラトカの運河の写真に魅せられたせいか、先日久しぶりに小樽運河を見に行こうと思い立った。小樽運河シムノンの船旅の五年前、1923(大正12)年に完成した。現役当時の面影を探しながら、北の端から南の端までゆっくり歩いた。今まで何度も見たはずの運河を初めてまともに見た気がした。