文学

村上春樹の「日本地図」:鈴村和成氏の「『村上春樹のノモンハン』を行く」を読んで

旅行記を読むのが好きだ。記録性の強いトラベローグtravelogue。流行のライフログではなく、本当の意味での人生の記録のような、旅が人生の極限の姿を晒しているような記録。自分のためだけの記録でもなく、かといって大向こうの人気を狙った記録もどきでも…

夏芙蓉

今日(7月9日)朝日新聞の夕刊に「中上健次自筆の句」という記事が載った。 あきゆきが 聴く幻の声 夏芙蓉 先日、タチオアイ(立葵)を芙蓉と間違えて、芙蓉からの連想で中上健次による架空の花「夏芙蓉」にまつわることを書いたこと、そして、先週『早稲田…

ブルース・チャトウィン『パタゴニア』

食わず嫌いで読んだことのなかったブルース・チャトウィン(Bruce Chatwin, 1940-1989)。先日「ソングライン(Songlines)」について書いてから、手に入りそうな彼の本をあちらこちらに注文した。昨日、めるくまーる社から出た芹沢真理子訳の『パタゴニア』(IN …

フィルム補修と詩作:松本圭二氏の痛快

フィルム・アーキヴィスト兼詩人であられる松本圭二さんが『アストロノート』で萩原朔太郎賞を受賞なさったという記事を読んだ。 朝日新聞2006年9月23日朝刊2面 松本圭二さんのプロフィールやお仕事については、公式サイトにも詳しい。 「松本圭二 公式サイ…

折口信夫とマイルス

雑誌『國文學』9月号「折口信夫---新しく見えてきた像(かたち)」に吉増剛造さんの尋常ならざるテクスト「常世へ、底凝(ソコ)りの常世へおりていく------「妣(ハヽ)ノ声」他」が掲載されている。それは折口信夫の「妣が国へ・常世へ 異郷意識の起伏」(…

小川国夫と「器」

この数ヶ月間机の上に乱雑に積み上げていた新聞の切り抜きを整理していて、久しぶりに「凄い言葉」に巡り会いました。眼に留まって切り抜いた時にはその凄さをちゃんと認識していなかったのです。場所は7月3日付け朝日新聞夕刊の文化欄の隅っこの「こと場」…