GoogleとYouTube

講義の準備に追われている間に梅田さんが「YouTubeについて(3)」、「グーグルの垂直統合思想」、「グーグルは『次の大ヒット』を生み出せるのか」と立て続けに、非常に興味深い記事を書いていました(凄いペース)。『ウェブ進化論』の「その後」をリアルタイムでフォローする意味でも、また現に起こっていることの意味をつかまえるためにも、是非読むことを勧めます。
YouTubeについて(3)」http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060702
「グーグルの垂直統合思想」http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060703
「グーグルは『次の大ヒット』を生み出せるのか」http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060704
YouTubeについて(3)」に関しては、「スペース」という概念が「ウェブ上の当該関連サービスの競争空間」として導入された上で、YouTubeのようなビデオ関連サービスがすでに173個(!)もスペースにひしめいているという事実が報告されています。VC等の投資の話題、バンド幅コストの話題、またGoogle Videoとの比較の話題、の後、私にとって非常に興味深い「世代論」が展開されています。すなわち、情報を「溜め込む(ストックする)世代」と「流す(フローする)世代」の違いを巡る考察です。私は梅田さんより3歳年上の1957年生まれですから、世代的にはストック世代ということになりますが、実は意外と「フローする」傾向が強いのです。本は利用しやすい図書館にあればいいから、なるべく手元には置かないようにしたい派です。ですから、梅田さんが次のように語る時代環境とそれが人々の行動を変える可能性は極めて高いと容易に信じてしまいます。
「これからは、「あちら側」に無限の情報が存在し、その検索性が高まり、なおかつネット上で人でつながっているので必要なら「誰かに情報を求める」というアクションも簡単に取ることができる時代である。欲しい情報のすべてが絶対に「あちら側」に存在するという保証はないが、かなりの確度で必要なときにアクセスできる(exactに欲しいものにたどりつけなくても似たような未知のものには必ずたどりつける)、と信じることができるようになると、人々の情報に対する行動は変わってくるに違いない。」
「グーグルの垂直統合思想」に関しては、すぐにレッシグの『コード』を連想しました。それは垂直多層の技術によって成り立つネットのガバナンス(支配)とコントロール(規制)の方法を巡る斬新な思考でしたが、一民間企業のグーグルが正に「世界政府」規模の視野と戦略に基づいて「情報発電所」を粛々と構築していることがびしびし伝わってきます。
「グーグルは『次の大ヒット』を生み出せるのか」は、グーグルのやや不可解な新サービス投入姿勢に関する考察ですが、それは他社とは次元を異にする「世界観」によるものだという指摘が非常に興味深いところです。その世界観そのものについての説明はありませんが、たしか『ウェブ進化論』では「世界政府」実現のための徹底した「テクノロジー主義」といわれていたものだと思います。それは1930年代に米国に興ったテクノクラシー(エンジニアによる一種の社会改良主義)の隔世遺伝的継承なのかどうか、興味は尽きません。