夢と現実/9.11の唯一の真実

大分前から気になっていた「是枝裕和×茂木健一郎対談」をやっと聞くことができた。予想通り、予想以上に面白かった。
是枝裕和×茂木健一郎対談
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2006/09/post_d7e9.html
音声ファイル(MPEG3)がダウンロードできます。2時間あるので、気合いを入れて時間を作って聞くことを勧めます。
映画監督・是枝裕和さんと作品についてはオフィシャル・ウェブサイトに詳しい。
http://www.kore-eda.com/
是枝さんと茂木さんの対談で一番面白かったのは、どんなに悲惨な切ない状況に置かれても、人はそこで得られる情報を頼りに「私の世界」を必死に構築しようとするというお話でした。是枝さんは、夢と現実の区別がつかなくなってしまった人が、夢を素材にして必死に「私の世界」を作ろうとする壮絶な様子を報告していましたが、その極端な異例と思われる話は実は私が日々無意識に行っていることを逆に照らし出してくれていると感じました。そして私は手に負えないくらい広がってしまった世界を相手にして、なんとか「私の世界」を構築しようともがいている自分に気づきました。相手にする世界が広がれば、その現実感は夢の現実感と大差なくなっていきます。あれは夢だったのではないか、と思うような出来事が増えていきます。ネットに向き合う時間が長い人はピンと来ると思います。
これを書いているのはすでに9.12ですが、もう5年経つのですね、あの9.11の出来事の記憶を想起なさっている梅田さんの真摯で自己批評性=ユーモアに溢れたコラムを読みながら、しみじみとした気分になりました。
[コラム] 五年前の今日のことhttp://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060911/p1
そうか、そんなことがあったのか、もし私が梅田さんの立場だったら、やっぱり同じように、それまで自明だった現実感が揺らぎ、あらゆる判断と行動が後手後手に回るような情けない自分に愛想を尽かすだろうなと思いました。でも、そんな時に、ぽっかりと口を開けたエアポケットのような穴から垣間見えるのは、やはり現実感というものの相対性なのだと思います。現に当時ツインタワーが崩れ落ちるのを拍手喝采しながら見ていた人たちもいたわけですし、私の想像を超えるある種の「やらせ」を指摘する情報も当時からネット上では飛び交っていたわけです。何が真実、本当の現実なのか、に対する答えは、それを問う人の生きている世界に相対的なものでしかありえない。9.11の唯一の真実はありえないのだと思います。