朝の散歩。家を出たときには、空気がかなり温(ぬる)かったのに、途中から気温がぐんぐん下がり、3、40分の間におそらく4、5度下がったのではないか、小雪が舞い始めた。
昨晩のグラヌールの夕べで配られた手作りの味のあるprogram。心と土地の表層を裏側から見る眼が控え、異界からの光が射す。そんな佇まいの素敵なprogram。
中村達哉さんは昨日の写真にあるように、はじめ硝子越しに見える戸外の雪の上で北国の妖精のように舞い転げ、大量の朽ちた落ち葉を拾い集めた。遠友学舍の西に面した壁一面に広がる大きな硝子窓は、あの世とこの世を隔てるスクリーンのようだった。中村君は、産道を通過する赤児のように、こちら側に「生まれてきた」かのようだった。私たちの視線を浴びながら、彼はこの世で生きる事の根源的な何かに触れていた。最後には観客を二つに割る「道」を辿り、そして、観客の視線が届かない場所、あの世に消えた。見事だった。「あそこで自由になりました」と彼は後で語ってくれた。「かけらから」がその舞踏、ダンスのタイトルだった。
中村君の踊りによって変容したその場の空気を乱さないように、しかも多方面に配慮の行き届いた石塚純一さんの司会進行によって、先ずは石塚千恵子さんによる、吉増剛造さん試訳のイエイツの詩「インスフリーの湖島」の静謐な朗読から「北辺雑話」は再開した。「雑話」とはいえ、それは想像力の世界におけるイメージと言葉の高密度な連鎖、ハイパーリンクの顕現であった。91年中森ギャラリーでの対談の記録「北の言語」において、すでに広範にマッピングされていた心と土地の景観の数々のポイント、ノード(節目)に、今回はさらに深い層の新たなノードが付け加わり、リンクの密度は桁違いに高まった。吉増剛造さんと工藤正廣さんが具体的に言及する実在する土地の記憶、そこに根ざした体験、追体験の記録の再現は、私にとっては、日々の体験の記録を一層深めるための普遍的な方法のヒントを与えてくれる、まさにギフトであった。最後の工藤正廣さんによるロシア語の詩の朗読は、雪の中の遠友学舍を独特の暖かい「音楽」で包み込んだ。
私が携えていったスライドショーは二次会の場でお披露目することになった。吉増さんはじめ同席した方々に喜んでいただけたのが嬉しかった。
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今日は午後から、昨晩の二次会で同席した浅川さんからお誘いいただいた北海道立近代美術館での「アイヌ文様の美---線のいのち、息づくかたち」展に足を運んだ。一階ロビーで、工藤正廣さんと書肆吉成店主の吉成さんと話し込んだ。
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カエルヤに入る吉成さんの後ろ姿。
美術館横にある「北都画廊」。まだ入ったことはない。