ジョナス・メカスによる365日映画、38日目。
Day 38: Jonas Mekas
Wednesday February. 7th, 2007 3 min. 45 sec.
The ashes of
George Maciunas,
the impressario
of Fluxus, come
back to Vilnius,
Lithuania,
mysteriously &
magically.
フルクサスの主催者
ジョージ・マチューナスの遺灰
リトアニアのビリニュスに
帰る
なんと
神秘的で
魔術的。
カメラに向かいメカスは懐かしそうに、愉快に語る。
フルクサスの父、ジョージ・マチューナスは1978年に死んだ。1997年ビリニュスの若者たちがマチューナスを祝うイベントを催した。ビリニュスはリトアニアの首都でマチューナスが生まれたカウナスは隣町。それを聞きつけたリトアニア出身でイェール大学で教える詩人のトーマス・ベンスローバ(Thomas Venclova)がビリニュスの若者たちにある贈り物を届けるべく訪問することを決断した。その贈り物とはなんとマチューナスの遺灰だった。その機会にマチューナス本人ともいうべき遺灰をリトアニアに持ち帰るという心だった。
しかしベンスローバが直面した問題はマチューナスの遺灰は彼に遺志に従って黄海にばらまかれたということだった。そこで彼はある科学者の元を訪ね質問した。ロングアイランドのサウンド・ベイでフラスコに海水を満たしたとして、黄海にばらまかれたマチューナスの遺灰がそのなかにふくまれる確率はどんなものか、と。イェール大学物理学科のチカニアン(Alexei Chikanian)教授は次のように結論した。マチューナスの遺灰の原子のいくらかは確実にそのフラスコの中に存在するはずである、と。実際に数百万の原子が存在するはずである。
ベンスローバはそのフラスコをビリニュスに持ち運んで、ある特別祝賀会でデルビナーレ川にその水を注いだ。マチューナスの故国リトアニアへの帰還を象徴的に実現したわけだ。
最後の半分氷の張ったデルビナーレ川の寒々しい映像が非常に印象的だ。
***
リトアニアの首都"Vilnius"の日本語カタカナ表記はまだ揺れていて興味深い。「固有名の翻訳」の問題としても面白い。標準的な表記は外務省も使う「ビリニュス」(48200)。メカスの英語的な発音もそれに近く聞こえる。だが、「ヴィルニュス」(12800)、「ヴィルニス」(1440)、「ビルニュス」(793)、「ヴィルヌス」(438)も「健在」だ。「ビルヌス」(3)は絶滅の危機にある。括弧内の数値はGoogleでのヒット数。betsumiyaさんが書いているように、
ビリニュスはリトアニア語Vilniusの表記である。ロシア語ではVilnaポーランド語ではWilnoである。ただリトアニア語の正確な発音はヴぃルんュースと聞こえるようだ。
英語版のWikipediaではリトアニア語の標準的な発音が録音された音声ファイルが用意されている。1回聴いただけでは全く聴き取れない。100回くらい聴いていると「ヴィルノス」と聴こえてくる。ちなみに「ヴィルノス」はGoogleでは1件もヒットしない。
そもそも"Lithuania"についても「リトアニア」(2440000)が定着しているものの、やはり「リトゥアニア」(203)という表記も死に絶えてはいない。