ジョナス・メカスによる365日映画、4月、104日目。
Day 104: Jonas Mekas
Saturday April. 14th, 2007
9 min. 57 sec.
ヒロ・ヤマガタの
ニューヨークの
展覧会
規模といい仕掛けといい心理的な効果といい、人の度肝を抜くようなヒロヤマガタのインスタレーションについては公式サイトHiro YamagataのNGC6093でその全容を知ることができる。6000個以上あるという天井から様々な角度、高さで吊り下げられたキューブが、ストロボのレーザー光線を反射しながら様々な角度で回転しているのが一際印象的な空間。そのすべての壁、天井、床は乱反射する光線群をさらに反射するパネルに覆われている。メカスのカメラはそれぞれに少しずつ違った印象を与える何本もの通路と幾つもの部屋からなる人工的異空間を通過する。目がチカチカする。メカスに同行している息子のセバスチャンは何度も目を瞬(しばた)いている。
このNGC6093と名付けられたインスタレーションは2001年ニューヨークのACE GALLERYで開催された。*1ちなみにNGC6093とはM80とも呼ばれるこんな球状星団の名前である。*2
NGC6093は、日本でも2003年に横浜大桟橋で開催された「ART&SPACE宇宙芸術展-ヒロヤマガタとNASAの世界」で別のインスタレーションとともに展示された*3。それを実際に体験した人たちの反応と評価は二つに別れている。
例えば、Shot Put Go Goに見られるような「とにかく凄い」という酔った感想が一方にあり、TOKYO TRUSHの山口裕美さんのように、どちらかと言えば否定的な評価を含んだかなり醒めた見方の感想が他方にあった。私は体験していないので何とも言えないが、おそらく二面性があるのだろう。ただ、今日のフィルムで見る限り、あまり興味が湧かなかった。リアルタイムに体験していれば違ったのかもしれないが、分からない。一般的に言って、2001年という時期には「新鮮なイメージ」を喚起しえたのかもしれない。2007年ではすでに「古い」という印象さえ持った。
誤解を怖れずに本質的なことを言うなら、本物のNGC6093球団星雲の写真を眺めていた方が空間的にも時間的にも想像力を深く刺激されるのではないかとも思った。メカスの本音は不明である。会場ではインスタレーションに関しては、ひと言「凄い(terrific)!」と言っただけである。そして会場でのカメラワークの様子からは、インスタレーションそのものよりも、人々の反応の仕方に関心が向けられているように感じられた。
ところで、メカスは2月3日にも1994年の「地上楽園メルセデス・プロジェクト」当時のヒロヤマガタを登場させた。そのプロジェクトでは彼はメルセデスベンツという消費社会の華のような自動車産業の象徴におもねるように見せかけて実は手のこんだ批評をそこに籠めていたのではないかと私は書いたのだが、「NGC6093」に関してはどうだろう。NASAという宇宙産業の象徴にヒロヤマガタは寄り添うように見せて、実は派手な宇宙志向的インスタレーションによって暗に宇宙開発志向を批評しているのかもしれないと不図思った。また、メカスはヒロヤマガタのインスタレーションそのものよりも、たぶん人間ヒロヤマガタに興味があるのではないかとも感じた。それについて書く準備はできていない。
*1:http://www.artnet.com/Magazine/reviews/wong/wong5-29-01.asp参照。
*2:http://homepage3.nifty.com/SHADO/astro/library/m80.htm参照。
*3:Wikipedia「ヒロヤマガタ」によれば、「この展示は、宣伝の不備から一般的なヤマガタの版画作品を想起させてしまったため入場者数が伸び悩み、展示期間の最終日を待たずに終了」したという。