Zoë Lund, again:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、9月5日、248日目。


Day 248: Jonas Mekas
Wednesday, September 5th, 2007
5 min. 48 sec.

Zoe Lund talks
about her rats,
beautiful rats ---

ゾーイ・ルンド
彼女が飼っていたネズミたち、
美しいネズミたちについて
語る…

冒頭に、一瞬、昨日のアントナン・アルトーの写真が映ったかと思うと、今は亡きゾーイ・ルンド(Zoë Lund, 1962-99)が上機嫌にしゃべる姿が映る。1996年9月4日にアンソロジー・フィルム・アーカイブズを会場に開催されたアルトー生誕100年記念イベントに彼女は顔を出していたのだ。死の3年前だ。壁にアルトーの映画のポスターが貼られたアンソロジーの一階ロビーで立ち話するゾーイとメカス。イベント終了後らしく、二人の間を通って、観客が次々と帰っていく。

自宅アパートで200匹もの鼠を飼っていたことでも知られるゾーイが、白と黒の双子の大きな赤ちゃんネズミのことなどを楽しそうに話す。今はネズミは三匹しかいないという。二百匹以上いたネズミは色々あって三十匹になり、さらに色々あって大きな母親ネズミと二匹の子ネズミの3匹になった。そんな他愛もない会話が、メカスにとっては美しい、それこそ楽園の断片の貴重な記録なのだろう。建物内には、大勢の人の会話の声、ドラムとサックスの即興演奏の音が響いている。

メカスは建物の出入り口の開いたドアから夜の歩道を撮る。若者たちが輪になって何やら話している。彼らはメカスに気づいてポーズを取る。次にメカスは回転しながら、会場の様子を撮る。それから細い廊下を抜けて、シアターに出る。そこでオーグスト・バルカリス(Auguste Varkalis)がサックスを吹き、ダリウス・ナウージョ(Dalius Naujo)がドラムを叩いていた。

3月29日にゾーイ・ルンドを追悼するかのようなフィルムを見た。そこで書いたように、脚本家兼女優であったゾーイ・ルンドの人生については、元夫のロバート(Robert Lund)が運営する公式サイト「Zoë Lund」に詳しい。色々あった末に、彼女は97年にパリに引っ越し、99年にパリで亡くなる。37歳だった。

映画「American Hardcore」(2006)で知られるポール・ラックマン(Paul Rachman)が2004年に制作した約6分のショート・フィルム「Zoe XO」はよくできている。元夫ロバートがニューヨーク市内を車で走りながら生前のゾーイを回想する夢のような映像である。