言語哲学入門

幸福に生きよ!

自分が止むに止まれずやっていることの意味はいずれいろんな形で徐々に明らかになる。不安や自己嫌悪や自信の無さに苛まれつつ生きていた時が、後になってみると、実は一番充実していて、ある意味で一番幸せだったのではないかと思えることも少なくない。生…

もしノーと言わなければならないのなら、

ヴィトゲンシュタイン (WITTGENSTEIN) [DVD]出版社/メーカー: アップリンク発売日: 2000/09/26メディア: DVD クリック: 20回この商品を含むブログ (36件) を見る ヴィトゲンシュタイン―Directed by Derek Jarman 映画の哲学。プランを持たない。それなら、仲…

全体

ルーちゃんと三ちゃんの架空の対話3三ちゃん:最近、何考えてんの?ルーちゃん:言葉って、無数の鍵盤からなるピアノみたいなもんだと考えるといいのさ。無数の弦からなるギターでもいいけどね。だから、一言発する、一文字書き付けるってことは、そんな途…

対象とは何か

ヴィトゲンシュタイン (WITTGENSTEIN) [DVD]出版社/メーカー: アップリンク発売日: 2000/09/26メディア: DVD クリック: 20回この商品を含むブログ (36件) を見る 私たちはまず若きウィトゲンシュタインが『論理哲学論考』で企てた無謀とも思える哲学的探究の…

今、ここ

三ちゃん(三上)とルーちゃん(Ludwig Wittgenstein)の架空の対話2三ちゃん:この言葉の意味は、とか、この天気図が意味していることは、とかと同じようには、人生の意味は、とか、世界の意味は、なんて言えないのは、「意味(する)」という言葉の使い方…

三浦梅園とウィトゲンシュタイン

数年前から私の研究室の本棚の一隅に三浦梅園コーナー(二冊しかないが)がある。だいぶ前に、金ちゃんが、大分の悠ちゃん(id:sap0220)を訪ねる際には三浦梅園資料館に行きたいと語っていたときにピンと来た。そして一週間前に、とうとうその理由が明かさ…

よく生きるとは

三ちゃん(三上)とルーちゃん(Ludwig Wittgenstein)の架空の対話:三ちゃん:ねえ、よく生きるってどういうこと? ルーちゃん:簡単でしょ。幸せに生きるってことでしょ。 三ちゃん:そんな簡単に言うけど、みんななかなか幸せに生きられないから、困って…

ウィトゲンシュタインの季節

今年もまたウィトゲンシュタインの季節を迎えた。今年は320名(先週は260名だったが何があったのか60名も増えた。ちなみに、10名を超えたら、100名でも1000名でも変わりないという感覚がある。)の学生たちと『論理哲学論考』を「読む」。 論理哲学論考 (岩…

オリエンテーション&特別講演会

今日から言語哲学入門が始まった。受講生は260名。初回の今日は履修上の注意事項の確認と講義の輪郭を伝えるオリエンテーションを終えてから、急遽段取りした特別講演会を開催した。 澤隆志さん「映像アートとは何か:イメージフォーラム・フェスティバル200…

言語哲学入門2007 レポート課題ほか

レポート課題 1『論理哲学論考』の理論的構図を概念マップとして描く。 2講義を通して特に関心ないしは違和感を持った点について「問題」として取り上げ、『論考』の主張を踏まえて論じる。『論考』その他からの引用を銘記する。字数制限2000字以上。 参考…

言語哲学入門2007 第11回 私とは何か

さて、前回概観した『論考』の「独我論」は、「世界は私の世界である」(5.62)というテーゼに要約されるものでした。今回見るのは、そこからさらに一歩進んで「私は私の世界である」(5.63)というテーゼに要約される一種の「実在論」の内容です。両者は見…

言語哲学入門2007 第10回 独我論

これまで『論考』の理論的中心の基本的構図を見てきました。前回はその根本的な思想に関わる「無限」を操作の反復としてとらえる考え方にも触れました。さて、今回からは、これまでの理論的考察から必然的に導かれるいくつかの主張を検討することになります…

言語哲学入門2007 第9回 論理と経験

前回までで、ほぼ『論考』の基本的な構図を見たことになります。難しいなあ、と感じたところも多々あったでしょうが、心配しなくでも大丈夫です。今回は今までやったことを総復習しながら、『論考』におけるウィトゲンシュタインの根本的な思想を検討する予…

言語哲学入門2007 第8回 真理とは何か

まず前回の復習をしますから、どこまで行けるか分かりませんが、一応今回の予定は、名の解明に続いて、命題の解明に進みます。そこで今まで曖昧なイメージのままだった「論理空間」のあり方が明らかになります。この段階で初めて対象の像としての名とは異な…

フレーゲって凄い!ウィトゲンシュタインって天才!

昨日の言語哲学入門の講義はめちゃくちゃハードな内容のはずだった。私は独り相撲になりかねないリスクを覚悟して講義に臨んだ。ところが、先週のデレク・ジャーマン(Derek Jarman, 1942-1994)監督の映画『ヴィトゲンシュタイン』(Wittgenstein, 1992)に…

言語哲学入門2007 第7回 名とは何か2

世界の存在論的基底は対象ではなく、あくまで事実であるというのが『論考』の出発点でした。そもそも対象は事後的に切り出されるものでしかなく、しかも不確定なのでした。一方、われわれが事実の総体としてのこの現実の世界に埋没したままではないのは、言…

言語哲学入門2007 第6回 名とは何か1:ラッセルのパラドクス

前回は最初の大きな山場である、「対象とは何か」をなんとか攻略しました。われわれは事実から対象を切り出してくるのだということでした。そのような対象の本質は外的、偶然的性質とは異なるいわば「形式」、ウィトゲンシュタインの用語では「論理形式」と…

言語哲学入門2007 第5回 対象とは何か

私たちはまず若きウィトゲンシュタインが『論理哲学論考』で企てた思考の限界、すなわち言語の限界を画定しようとする無謀とも思える探究計画の全体像を概観しました。次に、その探究の開始として、あくまでこの現実世界の最も厳しい了解から出発することの…

言語哲学入門2007 第4回 現実から可能性へ

前回は『論考』の序文を参照しながら、ウィトゲンシュタインの尋常ではない壮大な企画、すなわちすべての哲学問題にケリをつけるために、思考の限界を画定するという無謀とも思える企画を概観しました。それは実際には思考の表現としての言語の限界、すなわ…

言語哲学入門2007 第3回 『論理哲学論考』入門その1

第1回では「言語哲学入門」というこの講義の入口まで案内し、第2回では「言語哲学」の入口まで案内しました。そしてなぜウィトゲンシュタイン著『論理哲学論考』が「言語哲学」を学ぶための最良の教科書になりうるのかについて説明しました。一言で言えば…

教室には魔物が棲む

講義はライブである。90分間のライブ。準備は少なくとも一年前から始まっている。本の執筆で言えば、目次の構成と序文に相当すると言えるかもしれない、いわゆるシラバス(講義概要)はほぼ一年前に完成している。本の各章の内容に相当するのが毎回の講義ノ…

言語哲学入門2007 第2回 「言語哲学」入門

前回は「言語哲学入門」という講義に入門するための予備的なお話をしました。「言語哲学入門の入門」でした。皆さんに書いてもらった「思索記録」を大変興味深く読みました。中にはこれは次回の講義で話題として取り上げようと思うほど気合いの入った文章も…

言語哲学入門の教室を1403に変更します

言語哲学入門受講生のみなさん、教室変更のお知らせです。前回示唆しましたが、今回から教室を1403に変更します。よろしく。今日第2回の講義の中身については、後ほど。

言語哲学入門2007 第1回 はじめに

2007年度秋学期「言語哲学入門」受講生のみなさん、こんにちは。今日から講義が始まります。楽しみですね。実は、昨年度の講義の様子や概要をこのブログの過去のエントリーで知ることができます。日記検索に「言語哲学入門」と入力すれば、関連エントリーの…

氷原とザラザラした大地

立派な薪ストーブにつながっているにちがいない素敵な煙突。手の届かない理想か。 完全にアイスバーン状態。摩擦係数はかなり小さい。一定の速度でスムースに歩こうとすると体重移動がやたら難しい。(「論理哲学論考」的世界) 枯れて乾いた植物たちが青空…

過去は変えられる

過去の事実からなる世界は不動の固定した記憶ではなく、事実を表す言葉の組み替えや新たな言葉とのつながりによって、いつでも解釈し直され、書き換えられる可変的な記憶である。私がこれまで勧めてきた、日々の体験の記録と追体験の意義は過去の事実からな…

振り向けば、そこには

これまでの復習をかねて、『論考』に見てとれる世界の三つのイメージを確認してから、時間をめぐって提出されたいくつかのイメージを再検討した。 事実の総体としての世界 事実を分析してえられる不変の実体からなる世界 生きる意志に満たされた世界 過去と…

生きる希望、幸福のありか

映画館に観に行きたいなあと思ったが、結局行けず、レンタルビデオ屋に行く度にチェックするもいつも全部貸し出し中で、そのうち観るのをあきらめて、忘れかけていた映画「ALWAYS三丁目の夕日」。それがテレビ放映されることを帰宅後妻に知らされ、わくわく…

過去に舞い降りる未来

朝の散歩の復路で立ち寄ることが多い公園から遠望する藻岩山。「寒い」景観。 すでに雪に二度埋もれたにもかかわらず、まだ実をつけている「シラタマノキ」。しぶとい。見かけに寄らず、タフだ。***両眼は正面を、前を向いている。空間的な前方は身体行動…

ウィトゲンシュタインの幸福観

『論理哲学論考』を、その著者ウィトゲンシュタインに逆らって、徹底的に読み抜かんとする野矢茂樹さんは、『論考』の通奏低音のような「声」を次のように聞き分けている。(『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』13「死について、幸福について」…