Ben Vautier, politics on survivor:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、12月2日、337日目。


Day 337: Jonas Mekas
Sunday, December 2nd, 2007
8:59 min.

Ben Vautier
comments on his
early Fluxus
performances,
Part.2

ベン・ヴォーチェ
初期のフルクサス・パフォーマンスを
解説する。
パート2。

"Ben Vautier cont."(「ベン・ヴォーチェは続ける」)と字幕が入る。

前半は昨日の「続き」で、60年代にマチューナスやナム・ジュン・パイクらと行ったパフォーマンスの映像と解説。後半はベン・ヴォーチェによるフルクサスに関するフルクサス流レクチュア。

前半:60年代の劇場におけるパフォーマンス。
(1)ステージ上に仮面をつけた三人の男が立っている。
(2)正装し帽子を被った男達がこうもり傘の柄に白いテープを巻きつけている。
(3)客席の通路を走り回る。
(4)縛られた人びとが二手に分かれて引っ張り合う。
(5)大勢の人たちが頭上で紙切れを受け渡す(piece par papier de Patterson)
(6)男が椅子に腰掛けて興奮を鎮めている(CALMEZ VOUS SI NON ON S'ARRETE)。
(7)狭い台のようなものの上に何人の人間が乗れるかを試している。
(8)ナム・ジュン・パイクの顔にホイップ・クリームを塗りたくる。
(9)高所から水が落ちる音を音楽に見立てる(Drip Music de G. Brecht)。
(10)頭を筆に見立て、インクの入ったバケツに突っ込んだ頭で、大きなキャンバスにドローイングする(Opera piece de Nam June Paik)。
(11)ベンが紙に埋もれた客席の通路を走り回っている。
(12)マチューナスとベンともう一人の男がステージ上でピアノを破壊する(VIVACO FOR A PIANO)。
(13)客席に向かって「私を見て」と訴える(regardez moi cela suggitt)。


 自作ブランドの帽子を被るお茶目なベン。
後半:ベン・ヴォーチェによるレクチュア。
「僕の立ち位置を説明しよう」と語り始めるベン。ホワイトボード代わりに用意された模造紙にマジックペンでユニークな図を描きながら自分の位置づけについてかなり本質的なことをユーモアたっぷりに語る。「関心があるのは姿勢なんだ。疑問と疑い。一番重要なセンテンスは『いつも何かが起こる』。もう一つは『ピカビア・センテンス』、『われわれは自分自身を反復する』。正確には分からないんだが...。時間。計算は時間を破壊する。時間は続く。『生き残りのポリティクス』(politics on survivor)に興味があるよ。今ではもうフルクサスにあまり興味はないんだ。というのも、それは歴史的な問題になったから。『次は何か』(what's next)が問題さ。次は"Li"さ*1。未だ知られていない誰かに興味がある。歴史に『疑問符』(interrogation point)を突きつけるジョニー・マリーン(未同定)が好きだ。芸術を疑問視する人が好きだ。僕は何かを『作る』(produce)だけじゃない。もちろん、よく『疑問符のプロデュース』はするんだけどね。面白いね。何か質問ある?」

というわけで、歴史としてのフルクサスにはもはや興味はなく、絶えず歴史に疑問符を突きつけることに興味があるという現在のベンである。現在とは歴史を疑問視することだと言わんばかりのベンである。それが彼の生き残りのポリティクスでもあるのだろう。

*1:不明。もしかしたら、儒学における「理」のことを指しているのかもしれない。