杉浦康平編著『アジアの本・文字・デザイン 杉浦康平とアジアの仲間たちが語る』(トランスアート、2005年)を読み直しながら、この本の本文組に使用されている書体が気になり出した。ウェブ上で調べた限りでは同定できなかった。この本への言及は数知れず、書体への言及もわずかにあったが、書体名まで突き止めた例は見られなかった。ちょっと意外だった。
よくみる明朝体ではない。特にかな文字は毛筆の軌跡を濃厚にとどめていて、なまなましく蠢き、ざわめいている印象を受ける。写植の石井書体(023頁に言及あり)を手始めに、もちろん秀英体も含めて、いろいろ調べてみたが、結局書体名は突き止められたなかった。アジア各国の第一線のデザイナーとの文字を俎上にのせた対談が収録された本書の本文組に使用される文字である。杉浦康平はその内容にふさわしい、「これぞ」という書体を選んだに違いないはずなのだが。