生没年の表記をめぐって

すでに亡くなった人物に関する生没年の表記法は、日本語と英語の間で基本的に違いはないし、特に問題は生じない。生年月日と没年月日が併記される。ちなみに、下の(1)日本語のウィキペディアの例では左右にスペースを入れてハイフンが用いられ(私の理解では「誤用」)、(2)英語のWikipediaでは左右スペースなしで半角ダッシュが用いられているが。

(1)三島 由紀夫(みしま ゆきお、1925年1月14日 - 1970年11月25日)は、戦後日本を代表する小説家・戯曲家。(ウィキペディア
(2)Yukio Mishima (三島 由紀夫, Mishima Yukio) was the public name of Kimitake Hiraoka (平岡 公威, Hiraoka Kimitake, January 14, 1925–November 25, 1970), a Japanese author and playwright.(Wikipedia

ところが、存命中の人物の場合にはマナーというか配慮というか、微妙な問題が気づく人は気づくというレベルで生じる。同じ日本語でも下の(1)のようにいずれ没年月日が入るであろう場所を機械的に空欄にして生年月日の数字だけをぽつんと置いた場合と、(2)のように「〜に生まれる」とひとまとまりの句として表記した場合とがある。英語ではたとえ辞書、事典のように要約度の高いものでも、私の知る限りでは必ず(3)のように「born〜」という句として表記される。どっちが「美しい」かということ。

(1)村上 春樹(むらかみ はるき、1949年1月12日 - )は、日本の小説家、米文学翻訳家、エッセイスト。(ウィキペディア
(2)村上春樹 むらかみはるき 小説家・翻訳家。1949年1月12日に京都に生まれる。(はてなダイアリー、キーワード
(3)Haruki Murakami (村上春樹, Murakami Haruki, born January 12, 1949) is a popular contemporary Japanese writer and translator. (Wikipedia

実は私は今までこのブログでは(1)のような略式を用いてきた。雑誌の原稿でも、ジョナス・メカス(Jonas Mekas, 1922 - )などと書いた。しかし、ちょっと待てよ、と思った。それって、大変無礼な書き方ではないかと。例えば、私のことを誰かが三上勝生(みかみ まさお、1957年8月21日 - )と書いているのを見るのと、三上勝生(みかみ まさお、1957年8月21日に室蘭市に生まれる。)と書いているのを見るのとでは、実際にはあまり気にしない質だが、敢えてどちらが気分がいいかと自問するなら、答えは、明らかに後者である。というのはそれはわざわざ手間をかけて書いてくれているからである。前者は明らかに手間を省くという書き手の都合が優先された書き方であり、しかも敏感な人なら、没年月日が入るであろう、つまり死を仄めかすスペースが気になって仕方ないであろう。縁起でもない、と。今後存命中の人物の生年(月日)表記が必要な場合には、例えば、ジョナス・メカス(Jonas Mekas, 1922年12月23日にリトアニアのセメニシュケイに生まれる。 )のように、少なくとも句表現にしようと思う。