転換点

文章、写真ともに何ともいえない魅力を感じさせる『平民新聞』。私から見れば当然と思われる展開が報告されていた。

案の定、heiminさんの写真に心動かされたある編集者が数多のプロの写真家をさしおいて、heiminさんに『鉄のバイエル』(asin:4478004161)という単行本の写真撮影を依頼したのである。他人事ながら、『平民新聞』の一ファンとして、自分のことのように嬉しい。

ブログによって現実が大きく動いたこの出来事について、heiminさんは「転換点」という認識を表明している。

書いているぼくとしては、平民新聞という日記には、たとえば履歴書に何かを書く以上に、金子平民という一人の人間についてきちんと書いたり説明したりしているつもりなのですが、同時に「日記を見ればおれのこと全部わかるだろー」というような、そんな甘い理屈は、(当然ながら)世の中で通用するものではない、という厳然たる事実もまた、ぼくは当たり前のように理解しております。

ただ今回、「ネットの中」と「ネットの外」という垣根をとびこえて、一人の編集者の方がインターネットの日記を通じてぼくに具体的な仕事を依頼してくれた、という出来事は、なんというのか、言い方が難しいんですけど、わりと大きな(心の中での)転換点といいますか、ものすごく平たく、味もそっけもない言い方をしますと、去年唐突に見知らぬかたからカメラを頂いた事や今回写真仕事を頂いた事を突破口にして、平民新聞という日記を通してなんとか自分の人生をおもしろい方向に切り開いて行けないだろうか、という考えをクソ真面目にぼくは持っております。

ちなみに、heiminさんは実名を公開していないが、今回のheiminさんの写真家としてのデビューという出来事は、ブログの力は実名か否かにはあまり関係なく、あくまでその内容によるということのひとつの例証であると思う。

それにしても、『鉄のバイエル』未収録写真の数々もいい。東京駅の生きた姿がびんびん伝わってくる。その中の一枚に、修悦体を連想させるガムテープの構内案内表示があった。