カタツムリ君が行く

札幌、曇。蒸し暑い。

散歩の帰り、道のど真ん中に、そんなところにいてはいけないはずの生き物がいた。おい、おい、と声を掛けながら、近づいて、しゃがみ込んで、話しかけていた。こんなところで何している?車に轢かれちゃうぞ。

そんな私の忠告はどこ吹く風の様子で触覚をユラユラさせながら毎秒数ミリの速度で移動していた。車に轢かれて死ぬかもしれないという可能性はこのカタツムリ君の生きる世界には存在しない。彼/彼女の生きる世界にはどんな時間が流れているのだろうと思った。その時間に少しは触れられるかと思って、ビデオ撮影に切り替えた。ヒヨドリの囀りと風太郎の荒い息をバックに、カタツムリ君が行く。なかなかいいよ。

タツムリ君をそのまま放って、その場を立ち去りかけた私の中で、見殺しにする気か、という声が響き渡って、私は一瞬びくっとして立ち止まり、振り返ってカタツムリ君を見た。躊躇せず私は彼/彼女を持ち上げて、道ばたの安全そうな場所に置いた。彼/彼女には一体何が起こったのが分からなかっただろう。でも、私の中では何かが変わった。私は世界の未来を変えた。変なことばっかり考えてないで、ゴミ出ししなければ。