帰還:死者の眼差し

さて、いうまでもなく、シュッポロを舞台裏で支えてくれたヒグマの親子、宮澤賢治、吉田一穂、アイヌの妖精たちなどは、人間を超えた存在やこの世の生を超えた存在(死者)の視線、眼差しを代表するものたちでした。私たちの人生、日々の言動は、動物たちや、植物たち、そして死者たちにとってみれば、何を小賢しいことを宣(のたま)い、何を愚かな事を続けているのか、ってなことに違いないと思われるからです。いい加減にしろ!と。

そんな人間の外部、そして人生を超えた考えられうる限りの遠い視点、そこからの眼差しをも味方につけたかった。応援してもらいたかった。それが手拭爺の本音でありました。人生色々かもしれませんが、不幸な人生はばらばらに不幸で、幸せな人生はどこか共通しているところがある、とは昔から優れた目を持つ人々が折にふれて語ってきたことです。その幸福の共通項に触れて、これからの人生を見かけの上では違っても、その核心において共感し合える、そんな風にそれぞれがそれぞれの道を生きていけたらいいなあ。それが手拭爺の偽らざる希望であり、彼はそのためにこそ生まれた役柄だったのです。

どうも、お騒がせいたしました。