The Ink-Keeper's Apprentice


The Ink-Keeper's Apprentice

複雑な家庭の事情から、12歳で一人暮らしを始めたアレン・セイ(1939– )は漫画家・野呂新平(1915–2002)の弟子となった。本書はその経緯を生き生きと物語った自伝小説、アレン・セイの最初の本である。

あるとき、キヨイ(アレン・セイ)は先生(野呂新平)にその驚くべき着想の豊かさの秘訣を尋ねた。先生は12歳のキヨイにこう諭した。

まわりで起こることすべてに注意を払うんだ。記憶こそ芸術家にとって一番大切なものであることを忘れるな。想像力(imagination)ってやつは記憶の再配列(rearrangement of memory)のことなんだ。記憶なしに想像することなんてできない。それから、直観(intuition)だ。注意を払い続ければ、最後には直観が働きだす。自分の直観を頼れるようにならないとな。(三上訳, The Ink-Keeper's Apprentice, p.31)

先生も凄いが、それを受け止めた12歳も凄い。

ウェブ上に野呂新平に関する詳しい情報は見られないが、児童書デジタル・ライブラリーで野呂新平の『魔王モンスタ− 』(たかはし書房, 昭和24年)と『聖ゴ−ルドマウンテン』(高和堂書房, 昭和24年)を読むことができる。

堀田穣氏がアレン・セイに関するまとまった紹介のなかで、The Ink-Keeper's Apprentice 全19章のうち第11章までのあらすじを公開している。

アレン・セイ(『仕事蔵』2007年4月6日)