記憶の彼方へ10:私の知らない家族の肖像

不思議ないい写真だなあと思って見始めて5年経つ。雪中寒中記念撮影。私の知らない家族の肖像。祖父方か祖母方の親戚だろう。昭和のはじめだろうか。正月の記念撮影か。青森か秋田か。薪が積まれている。板塀の続く向こうの二軒の家の屋根にも雪が積もっている。いつどこでだれが撮ったのか、写っているのは一体誰なのか、正確なところは知る手掛かりのない多くの写真のうちの一枚。一際印象深い一枚。家族あるいは母娘の実存的感情がひしひしと伝わって来る。私の中の祖父や祖母の記憶には存在しない家族なのに。重ね着して、ちょっと着膨れして見える三人の娘たち。三姉妹のそれぞれの年頃の感情と性格も滲み出ている。この撮影前後の賑やかなやりとりが目に浮かぶ。お母さんらしき人には苦労の跡が偲ばれる。


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