命がけ、唄を探す


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森崎和江コレクション 精神史の旅』(全五感)の『1産土』の解説を姜信子さんが書いている。「果てしなく血を流し生まれ変わり産み直し書きつづける、旅」と題した凄まじい文章だった。題名通りの「旅」の人としての先輩にあたる森崎和江に姜信子が命がけで挑む迫力に参った。それにしても、「命がけ」という言葉がとても印象に残った。姜さんによれば、森崎さんは「繰り返し記憶を語り直すこと」が、「何度でも納得いくまで命がけでこの世に自分を産みなおそうとしていることに他ならない、この世を命がけで産みなおそうとしていることに他ならない」ような「書くこと」を続けてきた旅人である。そしてそれは、「誰かが整えてくれたらしい道」からは外れて行き、「別の心臓を持つ別人」になって、「今までとは違う自分が生まれ落ちそうな予感」に打ち震えながら、「この世の果ての向こう側」、「未来のどこかの名もなき場所」を見失わぬように目を光らせて、「せめて自分に恥じることのない歩き方」をすることに他ならない。



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「いやな風が吹いてきたら、道に迷ったり、どこに神様がいらっしゃるんだかわからなくなったりしたら、じっと耳を澄ましてね、唄を探すんだよ。唄のあるところには、きっと神様もいらっしゃる。神様は唄が好きだからよ」(姜信子『うたのおくりもの』12頁)