魔境


長谷川さんちのベンチ


暴風雨の夜が明けた。雷鳴も二回轟いていたなあ。朝の空気は生温く湿り気を帯びていた。光の具合がよかった。写真家が「魔境」と呼ぶこともある、風景や人々の顔が潤いをもちはじめる時刻、例えば午後4時、があるけれども、そんな感じで、光の具合がよかった。でも、肝腎の写真の腕の具合はよくないので、いい写真は撮れっこない。ところで、私の未熟な経験では、「魔境」は雨上がりに必らずと言っていいほどやって来る。しかも雨や風が激しいほどいい。大気が激しく撹拌されたり洗われたりした後の大気は極上のレンズのようになることがあるような気がする。