命を受け渡す一瞬


アン・ビクトル「マドンナ」より、姜信子(文)アン・ビクトル(写真)『追放の高麗人(コリョサラム)』234頁


追放の高麗人(コリョサラム)―「天然の美」と百年の記憶

追放の高麗人(コリョサラム)―「天然の美」と百年の記憶


ウズベキスタンの写真家アン・ビクトルが撮った写真に強く惹かれてきた。彼の写真は命を撮った写真だからだと思う。例えば上の一枚の写真は、生と死を飲み込んで受け渡される命の一瞬を見事に捉えたものだと感じる。それはいわゆる「決定的瞬間」ではなく、むしろありふれた光景の断片にすぎないかもしれない。だが、そんなありふれた光景のなかにこそ、命の全体像のようなものが煌めく一瞬があるような気がしてならない。