ページの後ろ姿を見送る


鈴木一誌『重力のデザイン』327頁/328頁をめくったところ

書物のページを考える。本を読むことは、ふるまいとしてはページをめくる行為の累積だが、読み手の意識からはページをめくったできごとは消えている。「画像の面」が陥没している。ページを読み終えた刹那、幽かながら、ページの存在がはじめて意識にのぼるのだが、そのときはすでにページはめくられている。読書は、ページをめくる行為の、と言うよりは、ページの後ろ姿を見ることの積み重ねなのだろう。ページの後ろ姿は、そのままテクストを読ませようと待ちかまえる〈次の〉ページへとただちに変身していく。

  鈴木一誌『重力のデザイン』328頁


なるほど。見開きは別にして、ページは〈次の〉ページと表裏一体だから、ページの「存在」も「後ろ姿」もめくられる刹那に幽かに意識されるだけであるが、たしかにその瞬間に、私はページの後ろ姿をまだよく知らない人の後ろ姿を見送るように見送っているような気がする。