写真を撮りながらぼんやり感じていることに思わぬ角度から言葉の強い光が当てられた気がした。
名づけられてなお
意味を割って振れていく
鋼に覆われてみずみずしいわたしの時間。
その静かな満ち欠けの中に
浮かび上がる
見えないものをふくむ形とはなんだろう
たえて夢見られることのないその
夢にも似た。
(と、それはひとつの幻のようであった)
ものの向こう側を測ろうと動く視線が
ものとともにしだいに
奥行をましていき
手強い影のあらがいとつりあうところ。
地に重ろうとする距離を破って
捉えられた形はいま
花を超える
花となって。
(誤解するそのしかたに、人の面目は最もよく現れる)
さあ、冴え渡る光とともに移ろおうではないか
心のない花の
その心のように。
偶然が触れる余地もなく
同じものとなってとどまるばかりの
陽にぬるむ日々を分けて。
たとえそれらの日々がわたしを
忘れ去ることになるとしても。
河野道代「花の名、その花」、『花・蒸気・隔たり』(panta rhei, 2009年)所収