情報倫理2007 第5回 書けば誰かに届くはず、と思えるようになった:ブログと総表現社会

「書けば誰かに届くはず、と思えるようになった」はインターネットの大きな変化の本質を個人的な実感レベルで見事に言い当てた梅田望夫さんの『ウェブ進化論』の中の言葉です。この言葉に励まされて2006年にブログを始めた人の数は物凄く多いのではないかと推測します。

「世界中のブログで使われている言語は日本語が一番多い」そうです。ブログ検索エンジンTechnoratiが追跡しているブログの数の興味深い統計分析の結果です。オリジナル記事は下の二つです。
Technorati Weblog: The State of the Live Web, April 2007
Sifry's Alerts: The State of the Live Web, April 2007

分析結果のポイントは次の通りです。

現在、ブログ検索エンジンTechnorati」が追跡しているブログの数は全世界で7000万。そのうち日本語で投稿された記事数は全体の37%で英語圏を抜いてついに1位に。
(中略)
ブログへの投稿数。日本語が37%で1位。英語は36%で2位。3位は中国語で8%。英語圏の有名ブログが日本語版を開設する理由はこのあたりにありそうです。

ブログ人口に関しては、総務省の一年前の調査結果「ブログ及びSNSの登録者数(平成18年3月末現在)」によれば、ブログ登録者数は868万人、SNS登録者数は716万人です。一年以上経った現在では1000万人はかるく超えているでしょう。

そもそも、インターネット人口に関してはどうかというと、世界全体ではInternet Usage World Stats - Internet and Population Statisticsによれば、2007年3月現在で10億人を超えています。また日本ではJapan Internet Usage Stats and Telecommunications Reportsによれば、2006年に8630万人です。

このようにここ数年激増しているネット人口、特にブログ人口の背景には何があるのか、が今回のテーマです。明日は、『ウェブ進化論』第4章「ブログと総表現社会」を参考にしながら、ブログもまた、他のWeb 2.0サービスと同様、そのあまりの敷居の低さと手軽さの印象によって、本当の「凄さ」が見えにくいが、ブログは社会的な変革力にさえつながる可能性を持ち、また個人にとっての最強といってもいい「知的生産の道具」にもなりうる点を中心に学びます。

具体的には、ブログのサービスとしての特徴とそれを支えるテクノロジー、ブログ利用者の爆発的増加の背景にあるネット社会の構造変化、今後の技術的発展(「自動秩序形成システム」の実現)によってもたらされる世界の変化の展望まで含めて、ブログに関する現時点で最も見通しのよい知識を得ることを目指します。

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前回は、『ウェブ進化論』第3章「ロングテール現象とWeb 2.0」を参照しながら、

1)「ロングテール(恐竜の長い尾)」の正確な理解に基づいて、
2)従来のeコマースのプラットフォームとは根本的に異なるアマゾンとグーグルによるウェブサービスの核心と、
3)「ロングテール」の認識における両者の差異(有限か無限か)がさらにアマゾンとグーグルの大きな違いにつながっていること、そして
4)Web 2.0と呼ばれる「インターネット第2期」の動向の本質を学びました。

1)に関しては、結構流布している「パレートの法則」を適用した誤解を正して、正確なイメージと理解を持てましたか。
2)に関してはアマゾンが「膨大な商品情報+API(Application Program Interface)」の無償提供によって、従来型のプラットフォーム的サービス(アマゾン孤島)からウェブサービス(アマゾン群島世界)へと画期的な移行を果たしたことの背景にはネット世界に関する「革命的な」見方(若い世代にとっては常識?)があることを再確認しておいてください。
3)に関しては、「死に筋」や「負け組」の商品の「総ざらい」を目指すアマゾンと、実質的に「無限」である未知の可能性の開拓に賭けるグーグルとの違い、具体的にはアマゾンのフルテキストサーチ・サービスとグーグルのブックサーチの違い、あるいはアフィリエートとアドセンスの違いが、物質的な商品(「こちら側」)にこだわるか、それとも情報そのもの(「あちら側」)に照準するかという違いから出て来ることを再確認しておいてください。
4)に関しては「定義」、「本質」、「効果」を読み直し、ヤフー・ジャパンと楽天がなぜWeb1.0段階でのエスタブリッシュメント指向を持ち、Web2.0へ移行できないのか、そして移行するには何をすればよいのかについて再確認を。

最後に、楽曲無料ダウンロードサイトmF247の「配信から創造へ」という情熱と気合いのこもった構想を是非実体験して、色々と考えてみてください。