写真家のプロフィール

何も変わらないと思うところから、俺たちはすべてを始めなくちゃいけないんだろ。
「撮影日記」(『平民新聞』2008-08-05)

「花咲か爺」を始めた爺は頷いていた。

「撮影日記」と題された文章が、まるで撮影された一枚の写真のように浮かび上がる。しかも書き手も文章自体も文中に登場する「陽炎」のごとく消えて行く。こんな文章は久しぶりに読んだ。そして、「なんだか、なつかしい気がした。」

振り向くと、Xはどこにもいない。ぼくもまた、陽炎に溶かされる。シャッターの響きだけが連続し、町にこだましていた。

ひとりの優れた写真家の秀逸なプロフィールを見た気がした。