20年後には頭でっかちの生活にはおさらばして、文字通り地に足のついた芸術のような生活を送るべく、もう少し南の土地かもう少し北の土地で、宇宙のなかの地球を心底感じながら、土壌の研究をして、羊を飼ったり、葡萄を栽培したりしてロビンソン・クルーソーかソローのような生活をしているのが爺の理想だが、もしかしたら今住む町にこのまま居座って現在の延長のような芸術と生活が分裂したような情けない老後を送っている危険性もある。
その頃には今住む家もこんな味のある風情を醸し出していることだろう(ありえない)。
そして例えば朝は、首に手拭いを巻き麦わら帽子を被った出で立ちで、相変わらずカメラを首からぶら下げて、植物などを定点観測したり、クルミを拾い集めたり、プラタナスの強すぎる剪定に抗議したり、登校途中の生徒たちや通園バスを待つ園児たちやお母さんたちに笑顔を振りまき、公園に集う高齢者仲間たちとワイワイ情報交換したりする。楽しい。
そして一段落したら出来立ての豆腐を買って帰るのだ。美味い。
日中は日中で町中を徘徊し、出会う人すべてに笑顔の押し売りをし、疲れたら、オールド・ストリート・カフェでコルトレーンでも聞きながら苦いコーヒーを啜っていると、その頃には笑顔もすっかり板につき、魅力的なウィンクさえ身につけている筈なので、ウェイトレスに話しかけられたりすることになるだろう。やったね。どうだ、坂。
その後再び町中を徘徊し、ミラーに映る景色を撮影したり、五重塔(本当に存在する)を眺めに行ったりする。
夜は夜で行きつけのスナックで得意の笑顔を武器にして酸いも甘いも噛み分けたid:h_catさんみたいなママを口説きながら、「腿尻3年胸8年」(吉行淳之介? 田村隆一?)の修行に励む。常連にはきっとid:namgenさんみたいな野蛮で卑劣なカッコいい爺が手強いライバルとして存在するであろう。負ケラレマセン、勝ツマデハ。
そういうわけで、私の住む町略式変則案内その1でした。なんと平凡で素晴らしい老後が待っているかもしれないことよ。