すべては結ばれている

1885年、先住民の土地を買い上げようというアメリカ政府の申し出に対する回答としてルンミ族のシアトル酋長が諸部族連合会で演説を行った。ル・クレジオはそれを「人類に遺された最も美しいメッセージ」であり、「世界のすべての学校で教えられるにふさわしい」内容であるとして引用している。部分的に孫引きする。

 あなた方 [白人たち] は子供たちに対して、足の下の地面はわれわれの先祖の灰でできているのだということを教えなくてはならない。子供たちが大地を敬うように、それはわれわれの人々の生命により豊かになっているのだと教えてやりなさい。われわれがわれわれの子供たちに教えていることをあなた方の子供にも教えなさい。大地こそ母なのだ、と。大地に対して起こるすべてのことは、大地の子たちにも起こる。人間が大地に唾を吐くとき、人間は自分自身に向かって唾を吐いているのだ。

 みずからの寝床を汚しつづけるがいい。するとある晩、自分自身のゴミ屑の中で窒息することになる。

 われわれは知っている。大地が人間のものなのではなく、人間こそ大地のものなのだ。われわれは知っている。血がひとつの家族を結びつけているように、すべては結ばれているのだと。すべての物事は結ばれている。
ル・クレジオ『歌の祭り』asin:4000222023、215頁〜216頁)

土地を我が物顔で奪い合う狂った魑魅魍魎が跋扈する。先祖の灰が土煙のごとく舞い上がる。ずたずたに切り裂かれ、無惨に切り刻まれた大地は頻繁に「大洪水」を起こす。生きるのに本当に必要な思想(「すべては結ばれている」)を見失った人間は自分自身を汚し続ける。「あなた方」は早晩「心に非常なさびしさを感じ、それで死んでしまうだろう」(215頁)。