横浜綺譚








中山さん(id:taknakayama)主催の前代未聞の大忘年会の一次会が終わる頃、横浜に着いた。マリンタワーを目印にホテルに向かった。チェックインして部屋に荷物を置いて、すぐにホテルを出た。軽く晩飯を済まそうと思い、中華街経由で二次会会場に指定された横浜スタジアムそばのブリティッシュ・バーに向かうことにした。中華街は人、人、人の波だった。適当な店を探してうろついているうちに完全に方角を見失った。以前中山さんが連れて行ってくれた店は行列待ちだった。他の目星をつけていた数店も行列待ち。諦めかけたとき、とある路地の薄暗い奥で大きな釜が白い湯気をもくもくと上げているのが目にとまった。思わず、その路地に吸い込まれた。肉まん1個300円とある。晩飯は肉まんにしよう。即座にそう決めた。表通りで肉まんを見かけたときには反応しなかったのに、なぜだろう。路地に剥き出しに置かれた釜の下のボイラーの口からはガスの炎も見える。郷愁? 訛りのある日本語を巧みに操る30歳くらいの中国人女性に「一個...」と注文した。一瞬の笑顔と疲れた表情が交代した。彼女は注文を受けてから蒸し始めた。蒸し上がるのに10分くらいかかっただろうか。待っている間、表向きは活気があって賑やかな中華街の空気の底に流れる冷たい川に触れたような気がした。肉まんを頬張りながら、横浜スタジアムを目指した。が、まだ方向感覚が狂っていて、すこし迷った。しかしそのお陰でZAIM(旧関東財務局兼旧労働基準局)の煉瓦建築に出会い、そこで煙突マニアの私にはたまらない古い映画のポスターを見ることができた。その後、数人の通行人に尋ねて、ようやく横浜公園に辿り着いた。公園内で、用意してあったサンタクロースの帽子を被った。何やってんだかなあ、と思いながら、会場のある一角を一回りして、帽子に(を?)心身を馴染ませた。結婚式の二次会帰りだと分かるほろ酔い加減の若い男女の集団から、次々と「カワイイ!」と思いがけない声がかかり、単純な私はとっても嬉しくなって彼らに笑顔を振りまき、気分も盛り上がった。店の前に近づいたら、反対側から見覚えのある陰のある男がやってくるではないか。id:hayakarさんだった。視界に入っているはずなのに、「三タ」(三ちゃん+サンタクロース。id:simpleAさんの命名。)に気づかない。仕方ないのでこちらから声を掛けた。彼が一瞬、ギョッとした表情を見せたのを私は見逃さなかったが、次の瞬間には指をさして大笑いしてくれたので救われた。狭い階段を上って店内に入ってからの記憶は、睡眠不足とギネスのせいで、朧げである。再会した人、初めて会った人、話した人、話さななかった人、その場では会えなかった人、大勢の変な熱い人たちの色んな形のハートに触れることができて、幸せな気分だったことは覚えている。菅原さん(id:alsografico)にも会い、彼の作品「栗のトレイ」と「きのこ」にも触れることができた。二次会終了後、大分から飛んできた小野さん(id:sap0220)と中華街でまだ一軒だけ開いていた店に潜り込んでしんみりと三次会をやった。こんな素敵な機会を全身全霊で設けてくれた中山さん、そして中山さんをしっかりと支えてくれた皆さんに感謝したい。やきとりじいさん体操のことはすっかり忘れていた。中西さん(id:gintacat)との約束が果たせなかったのはかえすがえすも残念である。翌朝目覚めると外は雨だった。チェックアウトしてホテルを出たら、イチョウ並木の歩道は黄色い落ち葉に覆われ、あちらこちらに淡い黄色の銀杏(ぎんなん)が落ちていた。ひとつ拾って嗅いでみた。懐かしいニオイ! さあ、id:mmpoloさんが東向島(玉ノ井)で待っている。