明るくて深いレポート

「大水槽を眺めながら眠る『えのすいクラゲナイト』」(『メレンゲが腐るほど恋したい』2009-05-07)


メレ子さんのレポートにはいつも感心する。根っからひねくれた私はいわゆる観光地などを訪れても、観光スポットから外れた場所ばかりに足が向いてしまい、暗くて浅いレポートしか書けない。メレ子さんの場合は、観光スポットに正面から向き合い、そこにズボッと入り込み、観光というイメージを壊すか壊さないかギリギリのところに踏みとどまり、でも、いつの間にか観光という「嘘」の向こう側にスルリと滑り込んで、数奇な運命をたどってそこにいる動物たちの間に紛れ込んで、彼等と一緒に愛嬌たっぷりにこちらを観察している。彼女の撮る写真の臨場感やそこに写る動物たちの愛嬌や可愛らしさの秘密はそのあたりにあるにちがいないと感じる。私たちが好むと好まざるとにかかわらずそこで生きなければならない不条理この上ないこの現実の世界だけど、なかなか捨てたもんじゃないものもけっこうあるよね。そんな声が聞こえてくる気がする。明るくて深いレポートをこれからも期待します。