「データのレオナルド・ダ・ヴィンチ」と異名をとるエドワード・タフテ(Edward R. Tufte, born 1942)が90年代に出した上の二冊もワクワクするほど面白い。私たちの複雑な経験(データ)を平面上にどうやって表現(視覚化)すればよいかを非常に明快に説得力をもって解説していることに改めて感動すると同時に、古今東西の事例にまじって日本の事例が頻繁に取りあげられていることに目を見張り、ある種の絵本のように平面を飛び出す立体的な工夫にも驚いた。もちろん、タイポグラフィ的にも秀逸である。
Envisioning Information(1990)では、シーボルトに仕えたことで知られる絵師、川原慶賀(Kawahara Keiga, 1786–1860)による長崎の出島の二方向から描かれた一対の鳥瞰図が優れた情報デザインの事例の筆頭に挙げられている。
また、第1章「平面からの脱出」の冒頭にはあの吉田初三郎の鳥瞰図を彷彿とさせる作者未詳の「伊勢神宮訪問者案内図(Guide for Visitors to Ise Shrine)」(1948–1954)が見開きで紹介されている。
一方、Visual Explanations(1997)では、カティッチ(Edward M. Catich)の名著『セリフの起源』(The Origin of the Serif: Brush Writing and Roman Letters, Davenport, Iowa, 1968)におけるあの古代ローマのトラヤヌスの碑文の「原ローマン体」の書体分析図が取りあげられている。タフテの観点とは別の観点からだが、ハッとした。