現実を変えたいと思ったら

現実を変えたいと思ったら、少なくとも自分の理想を明確に語れなければならない。そしてその語りが相手を説得し、相手を変える必要がある。現実はある面で人間関係、コミュニケーションの総体であるから、少なくともその関係、コミュニケーションの質を変えない限り、現実は動かない。理想によって現実を動かすことは、関係、コミュニケーションに一種の革命を起こすことである。そのとき一番深い変化は実は自分の中で起こっている。現実がいい方向へ動いているときには、自分が深いところで変化しているのだ。

しかし、以上のことをすべて裏返しにしたのが普通は現実である。自分は変わらずに、相手にだけ変化を求める。すると相手はますます頑なになり、現実もますますよくない方向に進む。そしてそんな現実の中で「私」は疎外感を募らせることになる。

人生の少なからぬ悩みはそのあたりに起因するのではないか。だとすれば、気持ちよく生きるための条件は明らかだ。相手共々自分を変えること。「楽しい」と心底感じている時には、そういう変化が知らずに起こっているはずだ。

現実も心も一枚岩ではけっしてない。幾層もの重なりからなる。同じ内容のことも、語り方次第で、相手をただ傷つけるだけで終わるか、相手を励ますことにもなる。言葉、メッセージにも幾層もの重なりがある。多層の「気流」が流れている。どの気流に乗るかで、行き先はまるで違ってくる。面白いっちゃあ、面白いが、それを楽しめるようになるには、少しは修行が要る。

大切な会議の最中、一瞬そんなことを考えた。