書体

Yoshimasu GOZO, THE OTHER VOICE/L'ALTRA VOCE(2005)とOptima nova

大分以前に注文してあった本がやっと届いた。吉増剛造の『THE OTHER VOICE』のイタリア語版である。しかし、本文にはイタリア語のみならず、日本語、英語、ハングルの大小の活字が紙面縦に複雑に組まれている。イタリアの詩人であり映像作家でもあるマルコ・…

‽(感嘆修辞疑問符, Interrobang)、意図せざる意図をデザインする:Galaxie Polaris (2004, 2005) by Chester Jenkins

Galaxie Polaris (2004, 2005) Galaxie Polarisの「インテロバング」 Village: http://www.vllg.com/Village/ たしかデカルトは人間の最も深いパッションは「驚き」であると語った(『情念論』)と記憶しているが、そのような驚きは衝撃的な疑問と分ちがたい…

カリグラフィーとの直接的な対話としてのネオ・ゴシック:Xtra Sans(2006) by Jarno Lukkarila

Xtra Sans(2006) 文字ってそもそも人間が生きてあることの最も深い感情が身体の多様な動きとなって顕われる、その軌跡の断片形のようなものではないだろうか。だから、実は文字は手書きが一番というのにも一理ある。翻って、画家が絵筆の先から繰り出す形を…

矢印には正規の書体ルールがない:Eric OlsonによるKlavika(2004)の試み

Klavika Klavika, Arrows: All weights, roman styles only. (no italic) 先日、「欧文書体の今を知る」シリーズをメモした。 欧文書体の今を知る、ことの意味 Frutiger*1 そのVol.1 : Klavika(2004) by Eric Olsonでは、「Frutiger(フルティガー)」をこよ…

イギリス風とは:Bliss(1996, 2004) by Jeremy Tankard

Bliss 片塩二郎氏によれば、タイポグラフィーの「知の領域」の観点からは、フレンチレストランの看板にはGaramond(ギャラモン)が、イタリアンならBodoni(ボドニ)が相応しいと言うに足る理由があるのだった。 古いものとの対話(2008-02-13) それに倣っ…

ドキュメンタリー映画『Helvetica』(2007)、無個性の個性

映画のポスター Helvetica [DVD] [Import]アーティスト: Helvetica出版社/メーカー: Plexifilm発売日: 2007/11/26メディア: DVD クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る 日本でもNTTデータなどがコーポレート・タイプ(企業の制定書体)として採用…

西のギャラモン体、東の明朝体

Dictionnaire Chinois, Francais et Latin, Paris,1813.(『漢字西譯』) ジョナス・メカスの365日映画(365Films by Jonas Mekas)、302日目(2007年10月29日)には、驚嘆すべき中国語、フランス語、ラテン語の対訳辞典が登場した。メカス一行がパリのアニ…

欧文書体の今を知る、ことの意味

粋で生きのいいAQの「欧文書体の今を知る」シリーズが面白い。 欧文書体の今を知る Vol.1 : Klavika(2004) by Eric Olson 欧文書体の今を知る Vol.2 : Bliss(200?) by Jeremy Tankard 欧文書体の今を知る Vol.3 : Xtra Sans(2006) by Jarno Lukkarila 欧文書…

Garamond、カリグラフィーの記憶

欧文書体のうち、16世紀以来の複雑な系譜をもち、もっともポピュラーで、もっともよく使われてきたのがGaramond(ガラモン、ギャラモン)である。書体としてのGaramondの概要はこちらで。 Variation of Garamond(朗文堂 type cosmique) ギャラモン(ウィキ…

イタリック体の由来

古代ローマの碑文(詳細不明)*1。関連して、タイポグラフィを扱う専門書のほとんどが取り上げ、「すべてのローマン・アルファベットの永遠の源」という評価を与えている「トラヤヌス帝碑文」(113年)がある。 プリニウス著『博物誌』(1472)*2。こんにち…

斜体には本物と偽物がある

広告のちらしやポスターでよく目にする右に傾いた書体(斜体)の文字は人の目を惹くための工夫であることは素人目にもよく分かる。しかし斜体の多義性についてはよく知らなかった。 上段にGaramondのローマン体、下段にイタリック体 オブリーク体 ローマン体…

Ampersand(アンパーサンド)における「et」の痕跡

『デザインの現場』に連載中の小林章氏の「フォント演出入門」第7回「食欲をそそる書体」(2008年2月号、asin:B0012ORI4O)を興味深く読んだ。特に、そのなかのコラム「Ampersand(アンパーサンド)の形」に刺激された。 「&」の正式な呼び方は「アンパー…

書体Thunderbirdに先住民の記憶が

2004年6月1日、私たちは死の谷(Death Valley)巡礼を無事に終えて、レイク・タホ(Lake Tahoe)経由で帰路についた。途中、ブリッジポート(Bridgeport)という小さな町のこんな可愛らしいお店Pop's Galleyで昼食にした。 ちなみに、イカリングフライを中心…

ヒラギノ書体の由来と動向:知の考古学

書体や活字など、文字そのものへの関心は、知識や情報のいわば「下部構造」、「無意識」への関心から発しているようだ。文字の造形には、朗文堂の片塩二郎氏のいう「タイポグラフィ」、すなわちリテラシーを含めた「知の領域」の幾多の層が畳み込まれていて…

しおA字ビスケットの書体は何?

これはいわゆる「坂ビスケット」こと、「しおA字ビスケット」のパッケージ。アルファベットを象った素朴な味のビスケット。小さい頃よく食べた記憶がある。製造元は札幌市西区二十四軒にある坂栄養食品。昨日の酒井さんとの雑談の中で話題に上り、懐かしさの…

古いものとの対話

10年前に買った『デザインの現場』(1997年6月号)を読んでいた。特集は「文字とレイアウト」。附箋が貼ってあった頁を捲ると、なんと先日メッセージをいただいた朗文堂の片塩二郎氏の記事だった。すっかり忘れていた。 冒頭の節「印刷の歴史はタイポグラフ…

オプティマに惹かれた理由

欧文書体のサンセリフ系のうち、以前からオプティマ(Optima)になぜか惹かれるところがあった。調べてみて、その理由の一端が分かった。 書体の分類上、一般的にはセリフのない活字書体であるためサンセリフに分類されるが、他の多くのサンセリフ体とは異な…

サンセリフ問題

図書館はローマン体。バークレー公立図書館(2004年10月18日撮影)。 本屋はサンセリフ体。バークレー、テレグラフ通りのコーディーズ書店(2004年10月18日撮影)。 実は日本語のいわゆるゴシック体に関して、以前から薄々感じていたことがありながら、ちゃ…

漫画の混植:アンチック体?

*1 漫画で使用される書体に関しては「混植」(アンチゴチ)が一般的であると初めて知った。 現在の一般的な漫画雑誌や単行本では、漢字部分をゴシック体、かな部分を明朝体という書体とした混植が一般的である(これをアンチゴチという)。*2 え?「アンチ」…