写真

見えないものをふくむ形

花・蒸気・隔たり 写真を撮りながらぼんやり感じていることに思わぬ角度から言葉の強い光が当てられた気がした。 名づけられてなお 意味を割って振れていく 鋼に覆われてみずみずしいわたしの時間。 その静かな満ち欠けの中に 浮かび上がる 見えないものをふ…

時間のレンズ

自然観察者の手記―昆虫とともに五十年 (1975年) 時間というレンズを通して見ているのだから、わざわざカメラのレンズを通して写真なんか撮るまでもないと思うことがある。優れた「自然観察者」はまるで澄明な空気のような時間のレンズを通して撮影したかのよ…

a wind flower by the window

ニリンソウ(二輪草, Wind flower, Anemone flaccida)

夜景

夢のかげ

目ざめて腕時計をみると 本書のタイトルは、島尾敏雄『夢のかげをもとめて 東欧紀行』(河出書房新社、1975年)に刻まれていた、活版印刷活字から拾われている。目をさまして時の刻みを確かめ、揺れ動く映像をたどり直したとき、私の、そして「私」の周囲に…

神木

ハルニレ(春楡, Japanese elm, Ulmus davidiana var. japonica)、イチョウ(公孫樹, Ginkgo, Ginkgo biloba L.)。中ノ島神社、札幌市豊平区。 信号待ちしているとき、ふと右手を見やると、数本の巨木が目に飛び込んで来た。鳥居を囲むように立っていた。…

卒塔婆のような

裏山の土地所有者名が記された標識板

Joe

現な像 写真家の杉本博司さんの『現な像』(新潮社、2008年)に、リチャード・セラ(Richard Serra, b.1939)の巨大な鉄の彫刻にまつわる話が出てくる。2007年の6月にジョナス・メカスがMoMAで一般公開されたリチャード・セラの彫刻展を訪れて、セラと言葉を…

夕景

夜明け

東の空。午前5時17分。日の出は5時22分。

太陽

太陽が見せてくれる気まぐれな光景というより「影」に過ぎないような世界に振り回されているような気がして、時々太陽に逆いたくなる。太陽そのものを見返してやりたくなる。でも、まともには見られない。目の前にかざした掌の指の隙間や縁からあの「光の狩…

高架道

白樺

シラカバ(白樺, Japanese white birch, Betula platyphylla var. japonica)

雪原

涙の泉:本橋成一写真集『アレクセイと泉』

アレクセイと泉 ものを見る目をいつも涙が薄らと覆っている。私は薄い涙のヴェールを通して世界を見ていることを忘れがちだ。あの日、実はそれまでに乾き切ってしまっていた私の目には、涙が身体の内部、奥深くのどこかから洪水のように溢れ出たはずだったが…

信号待ちの車中から

ドロノキ(泥の木/泥柳/白楊, Japanese poplar, Populus maximowiczii A. Henry)、シラカバ(白樺, Japanese white birch, Betula platyphylla var. japonica)、ハンノキ(榛の木, Japanese alder, Alnus japonica)、ニセアカシア(偽アカシア, Locust …

蘿藦、桂、榛の木、谷地梻

ガガイモ(蘿藦/鏡芋/芄蘭, Milkweed, Metaplexis japonica) カツラ(桂, Katsura, Cercidiphyllum japonicum) キタキツネ(北狐, Ezo red fox, Vulpes vulpes schrencki)の足跡 コバノヤマハンノキ(小葉の山榛の木, Manchurian alder, Alnus hirsuta …

舞踏する目

胡蝶の夢 細江英公人間写真集 舞踏家・大野一雄 釧路の‘This Is’で小林東さんに見せていただいた細江英公の写真集『胡蝶の夢』のことが忘れられず、図書館から借り出して見入っていた。小林東さんが細江英公の写真を見た時の衝撃について「これは一体なんだ…

Dancing Kazuo Ohno

吉田隆一『Dancing Kazuo Ohno』(canta、2011年、asin:4902098040) 手動映写機のような小さな写真集が届いた。2010年大野一雄が103歳で亡くなる四か月前に57歳で亡くなった写真家吉田隆一の遺作である。2001年5月15日大野一雄94歳の時に稽古場で撮影された…

気配を撮る写真家、ロバート・ポリドリ(Robert Polidori, b.1951)

Edwynn Houk Gallery Edwynn Houk Gallery - Jonas Mekas / Robert Polidori 2月23日からニューヨークのエドウィン・ホーク・ギャラリーで、「ジョナス・メカスとロバート・ポリドリのポートレイト」展が始まる。ジョナス・メカスの1月22日の日記に掲載され…

HASHI's Journey

今年もまた、写真家HASHIこと橋村泰臣さんから近況報告をかねた寒中見舞いとともに「Journey」と題した印象的な写真が送られて来た。草木のない荒涼とした岩場の上を行く七人の家族らしき人のシルエット。覆い被さる厚い雲の下で光に向かって歩いているかの…

and Film

写真家の鈴木理策さんによる「コダック破綻、とうとう来たか」(「朝日新聞」2012年1月25日)を読んだ。鈴木理策さんはコダックのフィルムや印画紙のやわらかな色調に魅かれた高校、大学時代の古き良き思い出を語っていた。なるほどと思いながら、そのような…

時間の廃墟、瞬間の経験

asin:4900997250、asin:4900997226 瞬間は極短い時間ではなく、時間という秩序から逸脱した途方もない深みのようなものであることに気づいたのは「いつ」だったか。当て所ない「時間の廃墟」の中を行くような散歩の最中だったか。それもまた「瞬間の経験」だ…

Faraway, so close!

「福岡・春日東小学校 1970年4月」、『音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治』(角川ソフィア文庫、2009年)66頁 なんていい表情なんだろう。いや、どうしてこんな瞬間を撮ることができたのだろう。井上孝治(1919–1993)が撮ったスナップショットを見なが…

カカドゥ村の美しい集落

Quiet life―Cacadu village,eastern Cape,Republic of South Africa p.12 本書には前田春人氏が1992年から2000年にかけて南アフリカ共和国の旧トランスカイ・ホームランドにあるカカドゥ(Cacadu)村を訪れ、村の暮らしの細部や村人の素顔などを自然光の下で…

レンズと翻訳

亡父の遺品の一部。レンズはニッコール28mmF3.5(上)、ニッコール35〜70mmF3.5(中)、ニッコール35〜70mmF3.5–4.8(下)。 asin:4817900105 本書では「すべてのレンズに神は宿る」をモットーに、ただひとつを除いて私の知らないレンズばかりが次々と取り上…

片足の男:サビーヌ・ヴァイスの写真

久しぶりに訪ねた友人の部屋で、本棚に何気なく置かれたモノクロームの写真に目が釘付けになった。「どうした? 写真が好きか? 欲しかったら、やるよ」彼は気軽にそう言った。「いいのかい?」私は躊躇した。「ああ、昔パリで買ったものだが、未練はない」…

初雪

ヒラギシスゲ(平岸菅, Carex augustinowiczii)、別名エゾアゼスゲ(蝦夷畦菅) ミズナラ(水楢, Japanese oak tree, Quercus crispula)

スターバックスのロゴマークの消息

スターバックスの店名は、シアトル近くのレーニア山にあったスターボ採掘場と、ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』に登場するエイハブ船長を諌める冷静な一等航海士スターバックの名に由来すると伝えられる。ロゴマークには船乗りとの縁が深いセイレーン(…

鴨々川の錦鯉

ニシキゴイ(錦鯉, Japanese carp, Cyprinus carpio carpio)。左岸にはイロハ紅葉、野村楓、蝦夷山紅葉。右岸には銀杏。北海道札幌市中央区南8西3、鴨々川(かもかもがわ)。