ルテニアのアンディ・ウォーホル現代美術館

明日、広場で―ヨーロッパ1989‐1994 (移動鏡シリーズ) ベルリンの壁が崩壊し(1989年)、ソ連邦が解体した(1991年)、正に激動の時代に東欧を旅した記録、17年前に出た港千尋さんの東欧写真集『明日、広場で ヨーロッパ1989–1994』に収録された紀行文を読ん…

涙の泉:本橋成一写真集『アレクセイと泉』

アレクセイと泉 ものを見る目をいつも涙が薄らと覆っている。私は薄い涙のヴェールを通して世界を見ていることを忘れがちだ。あの日、実はそれまでに乾き切ってしまっていた私の目には、涙が身体の内部、奥深くのどこかから洪水のように溢れ出たはずだったが…

Café Largo in Kushiro

豊文堂二階のCafé Largo 「釧路の豊文堂とThis Is」(2012年02月09日) 先日釧路で立ち寄った豊文堂の喫茶ラルゴの紹介文の中に大きな間違いがありました。豊川大輔さん「ご夫婦」がやっている、と書きましたが、豊川大輔さんは歴とした「独身」でありました…

小林東さんとの対話

先日十年ぶりに訪れた釧路の‘This Is’で小林東さんと交わした対話の記録。小林東さんの乾いて温もりのある声と陰影に富んだ語り口に魅せられて耳を傾ける度に、それまで気づかなかった大切なことに気づくということが起こっている。 舞踏家大野一雄(1906–20…

釧路駅、若松町、北大通、黒金町、末広町、栄町

百年前に石川啄木が歩き、三十年前に父が歩いた釧路の街を限られた時間の中で可能な限り歩いた。 釧路駅 駅前横断歩道 回送バス 駅前バスターミナル 釧路駅南北地下連絡通路 若松町(釧路駅の北側、駅裏の町) そば・竹の庵 ばんえい競馬ハロンズ釧路 路地 …

釧路の豊文堂とThis Is

豊文堂での掘出し物 十年ぶりに仕事で訪れた釧路の街で思いがけない出会いに恵まれ、懐かしい再会を果たすことができた。仕事に関しては、先方の都合で予定は部分的に変更を余儀なくされたが、同行した若い同僚の臨機応変な働きのおかげで予想以上にうまく運…

釧路のフィレンツェとリリー

釧路川河口 雄阿寒岳(1370.5 m) 旅先では昔ながらの喫茶店に立ち寄って、長年にわたって街や人の変化などをいわば定点観測してきたはずの店主や他の客、特に地元の客と話をするのがひとつの楽しみである。かりに誰とも話せなくてもいい。そういう喫茶店の…

ストラスブールから届いた楽譜:果てしない旅の歌

小島剛一さんと眺めた利尻富士(1,721m)。2011年9月4日撮影。 夏休みに小島剛一さんと北海道を反時計回りにほぼ一周する旅をした。その記録を断続的に書いてきた。 水際の旅、小島剛一さんと共に(2011年09月07日) 幌戸湿原(2011年09月18日) KAWASAKI 65…

ある日、岩内町で

先日、久しぶりに訪れた岩内町は北海道電力泊原子力発電所の3機が湾を隔ててはっきりと目視できる至近距離にあることに驚いていた。直線距離で5km余。原子力ムラ語で「調整運転」とやらをしていた3号機が、なし崩し的に「営業運転」に移行したのは8月17日…

A Tribute to the Memory of Mr. Hayakawa on the Road

2008年11月1日と2日、ハヤカー(id:hayakar)こと早川義春氏と車で「水の巡礼」と称する旅をした。以下に見られるのは、その旅の一日目に同行した当時まだ学生だった詩人のS君(id:t-pele)が道中、私のボロボロになったMiniDVのソニー製のハンディカム(DC…

マッカウス洞窟のひかりごけ

マッカウス洞窟のひかりごけ(光苔, Luminous moss or Goblin gold, Schistostega pennata)。北海道目梨郡羅臼町共栄町。 その日の午後三時半頃、私たちは羅臼町に着いた。海上の霧は深く、国後島はまったく見えない。雨脚が強くなってきた。知床峠を越える…

蝦夷鹿の子、リリィ

海沿いの見知らぬ小さな町にさしかかった時だった。私にはよくあること、ふと、国道から外れて、さらに海岸寄りの細い道に入った。住宅もまばらなその道を速度を落としてゆっくり行くと、海に面した雑草の生い茂った空き地で子鹿が草を食んでいるのが目にと…

KAWASAKI 650

その日の朝はやっぱり雨だった。前日の夕方、クッチャロ湖畔のトシカの宿に着いてまもなく、「血のような夕焼けが見えるわよ」と主の吉沼さんに言われて、部屋の窓から眺めた湖の上の空が燃えるように赤く染まっている光景を思い出していた。宿の前で、同宿…

幌戸湿原

9月1日の朝、霧多布岬の宿を出発した私たちは霧の中を浜中湾から根室半島に続く海岸線を嘗めるようにして納沙布岬を目指した。浜中湾の北岸の幌戸(ぽろと)に差しかかったとき、突然、左手の霧の中に瑞々しい緑の広がりが現われて、その上に焦茶と白の二頭…

水際の旅、小島剛一さんと共に

「闘う言語学者」こと小島剛一さん、襟裳岬にて。 先週のこと、昨年秋に交わした約束通り、ストラスブール在住の言語学者、小島剛一さんが北海道にやって来た。新千歳空港の到着ロビーで初対面の小島さんを出迎え、挨拶もそこそこに、小雨模様の中、道央自動…

現実と言語:清岡卓行『マロニエの花が言った』から

asin:4103431024 asin:4103431032 話は変わるが、金子夫妻がバタヴィアに上陸したちょうど五十三年前の一八七六年七月に、フランスのある詩人がやはりオランダの船でバタヴィアに上陸している。二十一歳のアルチュール・ランボーである。 ランボーはその二か…

幻の St. Point:a journey to the next world

Port of Aden (around 1910). Ships lying off Steamer Point at the entrance to the modern inner harbour アルチュール・ランボー縁(ゆかり)の港スティーマー・ポイント(Steamer Point)。この古い絵葉書ではセント・ポイント(St. Point)と記されて…

揺れる海上、揺れる人生:転身と抵抗の記録

島の青年になったひとりの若者の転身と抵抗の記録。彼の滾る血潮が七島灘に映る。 稲垣尚友・文/大島洋・写真『海上の集落−−薩南諸島トカラ』(ナツメ社、1979年4月、asin:B000J8HXF8)。大島洋の写真はカバー写真を入れて105点。 写真・大島洋(24頁) 海…

引き継がれる旅の記憶

下川裕治さんの「アジア」の旅の語りの中にひとりの興味深い男が登場する。今は亡きフリーランスのジャーナリスト森智章さん。 「石垣島に行ったら、伊原間(いぱるま)へ行くといいよ」 そう教えてくれたのが、知人の森智章君だった。彼は僕よりも少し若か…

1965年、ブレッソンとブーヴィエ

アンリ・カルティエ=ブレッソン(Henri Cartier-Bresson, 1908–2004)が1965年に北海道で撮った上の写真を見て、ああ、1965年といえば、ニコラ・ブーヴィエ(Nicolas Bouvier, 1929–1998)が北海道を旅した年ではないか、と腑に落ちるものがあった。公には…

台北の朝、台中の夜

11月14日朝、台北の裏道で犬のウンコを踏んだ後、康楽公園の公衆便所で靴を丁寧に洗い、向かいのマックに入りカプチーノを注文する。 11月18日夜、台中の好小子で夕食後、唐山茶でナツメ茶を注文する。

移動ヘルプカートに乗る

空港内の連絡通路を軽やかに走る電動カートに一度乗ってみたいと思っていたが、なかなかその機会は訪れなかった。先日出張を終え、新千歳空港に到着し、国際線ターミナルから国内線ターミナルに向かおうとして、長い連絡通路を歩きはじめ、動く歩道(moving …

セバスチャンの旅

Gražvydas Kardokas in Kaunas ジョナスの11月14日の日記にリトアニアの首都ビリニュスの隣町カウナスにいる息子のセバスチャンからのビデオ・レターが載った。カルドカス(Gražvydas Kardokas, born 1957)がカウナスの路上で踊りながらサックスを吹いてい…

台北

旅の道連れ、移動の快楽

Agend'Ars アジャンダルス作者: 管啓次郎出版社/メーカー: 左右社発売日: 2010/09/30メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 5回この商品を含むブログ (4件) を見る アイヌ神謡集 (岩波文庫)作者: 知里幸恵出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1978/08/16…

台中の好小子、唐山茶、春水堂

高速バスで台北から台中に向かう途中の景色 18日、青島から上海経由で台北に飛び、台北から高速バスで台中に入った。こう書くと簡単だが、実際には私にとっては非常に煩わしい中華人民共和国を出国するための税関の手続きと、中華民国に入国するための税関の…

台北、最後の夜に

[[ 19日夕方、台北駅に着いて、タクシー乗り場を探し歩いていたら、どこからともなく非常に小柄で色黒のおじさんが近づいて来て身振り手振りを交えながら大声でタクシー乗り場の場所を教えてくれた。通訳してくれたTさんによれば、そのおじさんはかなり訛り…

深圳点描

11月14日午後4時(日本時間午後5時)すぎ、深圳国際空港に着陸態勢に入った飛行機の窓から海岸線に升目状に拡がる田んぼのような池が目に飛び込んできた。何かの養殖用の池かと思ったら、塩田だった。 宝安区にある深圳国際空港。 Lさんの案内で広東料理…

青島(チンタオ)の金沙灘海岸で

青島市夜景 青島(Qingdao)流亭国際空港 経済技術開発区にあるホテル6階の部屋からの眺め。近くには飲食店もスーパーもコンビニもない。 部屋で青島ビールを飲むしかない 朝の景色 B学院で仕事を終えると、K院長じきじきにキャンパスを案内してくれた。…

台北の移動果物売りのおじさん

11月13日新千歳空港を発ち、台湾の台北と台中、そして中国の深圳と青島を巡った7泊8日の出張の旅から昨日戻った。今回の出張は、いくつかの事情から、台湾経由で中国に行き、また台湾経由で日本に戻るというやや変則的で、しかも移動に大半の時間が取られ…