サバイバー(SURVIVOR)小森さん

小森さんちの前を通りかかったら、わら縄の大玉が二個重ねて置いてあった。また何か作るつもりだろうか、と思いながら、シャッターの上がったガレージを覗くと、腰を下ろして何やら作業している小森さんの姿があった。声をかけて尋ねると、なんと、もう、冬…

T's Gallery Vol.3:波斯菊

「変梃林(へんてこりん)」(id:future-humanさんによる命名)あるいは「偉人館(いじんかん)」(私の命名)の異名を持つ「T's Gallery」こと、武田さんちの駐車スペース入口のコンクリートの割れ目から生えているハルシャギク(波斯菊, Golden tickseed, …

インディアナ・ジョーンズみたいな道井さん

アパート解体現場。あのクリスマスオーナメントはこの辺の瓦礫の中に埋もれているはずだ。 シマススキ(縞薄, Variegated Japanese Silver Grass, Miscanthus sinensis 'Variegatus') ムラサキツユクサ(紫露草, Spiderwort, Tradescantia reflexa) ツタ(…

まあ、かわいい!

「あんた、フリーかい?」と言われてから(http://d.hatena.ne.jp/elmikamino/20090823/p3)、塚本さんにはしばらく会わなかった。今週はじめに、畑の茄子の前にしゃがみ込んで育ち具合をチェックしているところに行き合わせた。その時は軽く挨拶だけして通…

別れは辛いが、、

いつも風太郎を毛だらけよだれまみれになるのも厭わずにもみくちゃにして可愛がってくれた上野さんは、古いがよく手入れされたとても良い感じのドイツ車に二〇年以上乗ってきた。しかし、最近いつの間にかその車を見なくなったと思ったら、今朝、お宅の前で…

T's Gallery

イエローのカブトムシ(VW)を乗り回す愉快な人、武田さんの家は凄いことになっている。通りに面した家の前が骨董屋と廃品回収屋と現代アートのギャラリーをミックスしちゃったような極めてユニークな空間になっているのだ。そもそもは鉢植えの植物たちが控…

コンテストに出してるのかい?

今朝は、「めんこいねえのおばあさん」ちにグラジオラスと菊の写真を届けた。写真を入れた茶封筒を新聞受けに入れたその瞬間、あら、と声がしてドアが開いた。ご主人だった。すでにすっかり顔なじみで世間話をする仲である。ちょうど猫を病院に連れて行くと…

謎の庭園

ハナ 謎の庭園の入口に立つ ホップ(西洋唐花草, Hop, Humulus lupulus) 初めて見るタイプの大きな直立した花をつけたダチュラ(朝鮮朝顔) チョウセンシオン(朝鮮紫苑, Aster koraiensis) ダリア(天竺牡丹, Dahlia, Dahlia pinnata) 未詳 ヤグルマギク…

道井さん

数年前から通りに面した自宅ガレージを開け放って、そこで毎朝コツコツと何かを作ったり、庭の草木の手入れをしている道井さんの職人っぽい姿に妙に惹かれてきた。今年に入ってから、ノウゼンカズラやアフリカホウセンカなどの写真を撮らせてもらった際に初…

牧野さん

シオン(紫苑, Tatarian aster, Aster tataricus) 未詳 風太郎時代からよく立ち話をする牧野さんちの通りに面した庭は大きくて初春から晩秋まで次々と各種の花が咲き誇る。今は大輪のアメリカフヨウやムクゲが花盛りで、少し前までは巨大な黄色のキダチチョ…

日曜日の朝遅く

日曜日の朝遅く、いつものように散歩に出る。ほっとくと惨めで、荒(すさ)んだな気持ちになりかねないところを、いつものように空気の裂け目を探して歩く。乾いて埃っぽいアスファルトの上で野球に興じる三人の少年たちに出会う。声を掛けてカメラを向ける…

トマトを二個もらう

M平さんちのチョウセンゴミシ(朝鮮五味子, Schisandra chinensis)の実が色づいてきた。M平夫人によれば、真っ赤になるという。 風に揺れるヒメジョオン(姫女菀, Annual fleabane, Erigeron annuus) 落ちたハナツリフネソウ(花吊舟草, Poor Man's Orch…

「そのスジの人に読んでもらえたら、本望だよ」と小坂さんは言った

Mr. K プラタナスの木の下でひと月ぶりにKさんに出会った。Kさんちのすぐそばである。私はようやく枝葉が伸びてなんとか見られる姿になったプラタナスを見上げてしゃがんで見たり立って見たり、ああでもないこうでもないと写真を撮っていた。気づかないう…

ブラックで乾杯

昨夜遅く、渋いウィスキーをぶらさげて、下川さん(id:Emmaus)が「誕生日を呪ってやる」と言って押しかけてきた。「敵」ながらアッパレ! しかし、飛んで火にいる夏の虫サ。さっそく、二人はどちらともなく「言葉なんか覚えるんじゃなかった」とかぶつぶつ…

あなたはホストにはなれない

S坂さんちのムクゲ(木槿, Rose of Sharon, Hibiscus syriacus) 「見事ですね、このムクゲ」と声をかけると、S坂夫人は笑顔で近づいてきて、こんなに沢山花をつけたのは今年が初めてだというムクゲについていろいろと話を聞かせてくれた。それはイボタの…

あんた、フリーかい

毎朝撮らせてもらっているダリアの写真を数枚一度届けてからは、塚本さんは出会うたびに渋い笑顔で感謝の短い言葉をかけてくれるようになった。そして大抵育てている花や野菜、それから椎間板ヘルニアの話になる。私のように散歩できるのが羨ましいとこぼす…

彼女は優しくノーと言った

N館さんちのセイヨウフウチョウソウ(西洋風蝶草, Cleome or Spider plant, Cleome spinosa) あるお宅の前を通りかかったとき、庭で風蝶草が風に揺れていた。今まで気づかなかった。丁度玄関から出てきたN館夫人に風蝶草を指差しながら声をかけた。「あの…

A平さん

今朝の散歩では、先日A平さんちで撮ったゼフィランサス(サフランモドキ, Zephyranthes carinata)などの写真をA平さんに届けた。こちらが恐縮するほど喜ばれ、感謝された。「いつもただで撮らせてもらってるお礼ですから、気になさらないでください」「い…

アルバムが何冊あっても足りんだろー

風太郎時代からの顔見知りで、風太郎亡き後に、向こうから「寂しいなあ」と声をかけてくれてから、言葉を交わすようになった年配の塚本さんは、まるで晩年のチェット・ベイカーを彷彿とさせる渋い風貌である。塚本さんは細長い土地で家庭菜園と花壇を楽しん…

E未亡人との会話

いつものように、サフラン公園入口のシナノキの下をくぐって、東屋で一休みしようと思っていたら、なつかしい先客がいた。ただ者ではないと常々感じていたE夫人だ。町内をかなりのスピードで駆け巡り、サフラン公園の東屋で一休みするのが彼女の日課だった…

「佐藤錦も知らんのかい」

オステオスペルマム(アフリカ金盞花, African daisy or Cape Daisy, Osteospermum ecklonis) ペレニアル・フラックス (亜麻, Perenial Flax, Linum perenne.L.) 未詳1 未詳2 「立派なサクランボですね」「佐藤錦だ」「え?」「佐藤錦も知らんのかい」…

JさんとOさんとの会話

果樹園みたいな広い庭を構える年配のJさんには今朝初めて会った。以前からその庭の前を通るたびに町内ではめずらしく通りに枝を長く伸ばしたサクランボの樹がイイなあと感じてよく写真を撮っていた。佐藤錦ブランドのサクランボの実を目の前で樹からもいで…

追悼ピナ・バウシュ(Pina Bausch, 1940–2009)

2009年7月1日朝日新聞夕刊 2007年11月に第23回京都賞を受賞した時のインタビュー記事(2007年12月7日朝日新聞)に掲載された写真(山崎虎之助撮影)を切り抜いて部屋の扉にずっと飾っていた。仕事に出るときには必ず目に入った。写真を通しても伝わってくる…

最後の琵琶法師、山鹿良之(1901–1996)

琵琶法師―“異界”を語る人びと (岩波新書)兵藤裕己(Hiromi Hyodo, 1950–)著『琵琶法師―<異界>を語る人びと』(岩波新書)を迷わず買った。テーマもさることながら、帯表の「演唱の実像を伝える稀少な映像DVD付き」、つまり付録に俄然惹かれた。子供の頃か…

桜の樹の下で

どこからともなく、見知らぬ生き物の聞いたことのない唸り声が断続的に聞こえてきた。あれ、こんなところに自転車だ。だが、持ち主の姿はどこにも見当たらない。と突然上から「ハァー」という大きな声が降ってきて、ぎょっとして見上げると、そこにTさんが…

オカイコサン(お蚕さん)

ヤマグワ(山桑, Mulberry, Morus bombycis) 近所のYさんが亡くなってもう3年経つ。主を失った家と庭はそのままだ。人が住まなくなった家からは少しずつ確実に体温のようなものが消えていくのが分かる。そして少しずつ自然に還っていくその庭を眺めるたび…

胴付き長靴

散歩の終盤、十メートルほどのゆるい坂道を登り切った突き当たりが急傾斜の空き地になっていて、そこに一本の桜の樹がある。桜の花が終わった後は、しばらくは特別目立たないが、そのうちマーガレットがぽつりぽつりと咲きはじめ、今頃はほぼ一面真っ白なマ…

それだけのことが嬉しい

思いがけない場所で彼女に会った。左手の空き地の雑草に気を取られていた私は、「こんにちは」という聞き覚えのある声のする右手に顔を向けた。すると、花壇の低い塀にちょこんと座って笑顔で私を見上げる彼女がいた。終わりかけたオダマキの紫色の花に囲ま…

K's Café !

Kさんちは人通りの多い交差点の角にあり、その庭は通りに面して非常に開放的である。要するに中が丸見え。居間の窓越しに朝食中のKさんの背中が見える日もある。その庭の入口に件のマスコットたちがいる(→ K劇場の秘密)。<トンチンカンの里>探訪はま…

N夫人との会話

アヤメ(文目/綾目, Siberian iris, Iris sanguinea) 最近の朝の散歩では、植物や稀に昆虫の発色や配色(時間的変化も含めて)を観察して色の勉強をするつもりで写真を撮っているところがあって、勢い接写が多くなっているのだが、今朝、通りに面したあるお…